長編小説『女神の盾』

□「これが私の運命?」
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ダンボールと絵の具で作られた鍾乳洞…魔女の結界。

ドーム状に開けたその場所の中央に、黒いコウモリ傘がうずくまっていました。

ボロボロに打ちのめされたその姿は、可哀想なほどに滑稽で。

わたしはそのコウモリ傘… 魔女に歩み寄ります。

「あなたも、いつまでも苦しいのは嫌だよね?」

わたしの姿を見て、魔女が悲鳴を上げます。

「だからさ…」

わたしはなるべく優しく微笑んで。

「早くグリーフシードを吐き出して、楽になっちゃえばいいんだよ!」

構えた弓に矢をつがえ、コウモリの魔女に解き放ちます。

一本じゃ足りません。
二本目、三本目。

桃色の光に次々と撃ち抜かれて、魔女はその度に苦悶の叫びを上げながらのた打ち回っていました。

「あははっ! うぇひひひ!! 早くグリーフシードを吐き出してよ!!」

………

鼓膜にこびりつくような魔女の断末魔の叫びが消えたあと、わたしは魔女の残骸の中から黒い石を漁りました。

「えへっ… やった♪」

見つかったのは、コールタールみたいな黒いドロドロに塗れた黒い石。

グリーフシードにまとわりつく黒い血は、わたしの白い手袋を汚し…

その汚れは肌を突き抜けて骨にまで染み付いてしまいそうで―










「ぃひゃあぁあああ!!」

間の抜けた叫び声と共に、わたしは跳ね起きました。


…ここはわたしの部屋。わたしのベッド。

そして枕元には、ぬいぐるみと一緒に置かれたノートが一冊。

わたしが授業中、先生の目を盗んで描いた、落書きのノート…

『わたしが魔法少女になったら…』

そんな事を思いながら、衣装だけでも考えておこうと思って描いたんだっけ。

何気なく手に取って、開いたページには魔法少女になった『わたし』。

その隣に、魔法少女のマミさんと、魔導士姿のほむらくん。

…コウモリの魔女を倒した後、マミさんはわたし達に色々な事を教えてくました。

魔女との戦いは命がけ… 戦いの中で死んじゃう子もいるって事。

魔女から得られるグリーフシードは、魔力を回復するための貴重で重要なものだって事。

魔法少女の中には、これを手に入れるために他の魔法少女を襲う子もいるって…

………

さっき見た夢を思い出します。

グリーフシードを得るために、嬉々として魔女と戦ってるわたし…

あんなの、魔法少女じゃない。

魔法少女はもっと、格好よくて優しくて…

そう、マミさんみたいな―
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