長編小説『女神の盾』

□「願い事、言うよ!」
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昼休みの見滝原中―

チャイムの音と共に、校舎内は喧騒に包まれる。

―鹿目まどかと美樹さやかは、共通の友人・志筑仁美あたりと昼食をとっていることだろう。

こうして、彼女たちの日常を守れている事にささやかな充実感を覚えながら…

僕はその日常に背を向け、教室を後にした。

必要以上に彼女たちと関わるつもりは、僕には無い。

それは彼女たち以外も例外ではない。

魔法少女は、魔導士は、その存在そのものが非日常。

関われば、魔女やインキュベーターなど不必要なトラブルに否応なく巻き込まれる事になる…

僕はなるべくひと気の無い場所へ身を置く為、教科棟へと向かっていた。


………


そんな僕の後を付けてくる気配…

周囲から人間の気配が消えた今なら、それは余計に目立つ。

背後から感じる、微かな魔力の波動。

相手は魔導士… もしくは魔法少女。

それは、僕のよく知る相手のものだった。

「………」

僕が足を止めれば、後の気配も止まる。

「………」

振り返ってみたが、そこに誰の姿もなかった。

…いや。

総ガラス張りの校舎に、隠れる場所などあるわけがない。

よく見れば、廊下に置かれた清掃用具を入れるロッカーの陰から金色の巻き髪がはみ出している。

「………」

僕は、相手にある程度の目星をつけながら廊下の角を曲がった。

「……っ!!」

僕の後ろから、見失うまいと何者かが駆け出す気配。

―僕は左腕に円盾だけを召喚し、時間を止める。

そして、僕を尾行していた追跡者の背後に回り、その肩に手を置いた。

動きだす、時間。


「…僕に何かご用ですか、巴先輩?」

「っっっ!?」










屋上―

「ご用向きを聞かせてもらえませんか?」

他の生徒の姿は見えないこの場所で、僕は追跡者―巴マミと向き合った。

「…とりあえず、お礼だけは言っておこうと思って」

そう言った彼女の表情は冴えない。
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