リクエスト
□オフの過ごし方(1日目・午前)
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ジャッジ隊のリーダーからご丁寧にバスタオルやら替えの下着やらを渡されて、職員用のシャワールームで汗を流した後。
ナース隊のキャプテンに、念の為だと左腕の診察をされた後にシップを貼られて。
保健室の前で待ち構えていた静久に連れられて応接室に招かれた。
「お疲れ様でした。私もその場に立ち会いたかったです」
コトリ、と目の前にアイスティーが置かれる。
「戻ってきてからのひつぎさんがご様子がとても活き活きとしてるので。あの感じのひつぎさんには剣が関わってるでしょうから…余程素晴らしい仕合だったようですね」
奥の仕事机、山のように積まれていた書類を一掃したひつぎが纏う空気は非常にアレだった。
「あー…宮本も大変だな」
「? 何がですか?」
「小躍りだけはさせるなよ」
言うと紗枝が小さく吹き出して。
「でもああなってる理由が理由だから、静久も一緒に踊るんじゃない?」
「…そうか、やめとけな宮本」
「はぁ」
何を言われてるのか分からないといった様子でひつぎの方を見やると、それに呼応するようにひつぎが不敵な笑みを浮かべた。
「…今、もの凄く既視感を覚えたんですが」
「何と」
「…学生時代のあらゆる場面と」
困った顔で長く大きな溜め息。でもそれもすぐに笑顔へと変わった。
「でもきっと関係する人たちは、皆さんが楽しんでしまうんでしょうね」
「えらく前向きだな。」
「私もひつぎさんに負けないくらい好きですから、剣が。
振るう機会が減ってしまったとはいえ、お二人もそうじゃないんですか?」
まぁ、無茶振りに応えて全力を出してしまうほどには。
あたしも紗枝もそうなんだと思う。
「在校生も、きっと今までの卒業生たちもそうです。それが証拠に」
「?」
「鐘はずっと、途切れずに鳴り続けてますから」
拳を作って微笑む静久。その後、肩を震わせて笑いを堪えるひつぎ。
どうして笑われているか理解出来なくて混乱する宮本を見て、紗枝も笑う。
「はー…静久の言葉はその拳のように、わたくしのボディにズシンとくるわ…」
「仕える人間がアレだと、従う人間もアレにならないとやってけねぇんだな」
「バカにされてますよね、私」
「だめよ静久。せっかく伏せて言ってるのに答えを言ったら」
「そんなふうに思ってくれて、わたくしは嬉しいわよ静久…ぶはっ」
こいつらの場合、根っこのほうから繋がってるんだろう。
同じようなことを言ってのけるくらい、思考回路までしっかりと。
「とにかく!その今までが、これからの私の道標なんです!」
「最高よ静久、くっくっく…」
「静久、一度黙ったほうが腹直筋に優しいと思うわ」
居場所の変わったあたしらの、あの頃と変わらない遣り取りは。
再びひつぎが書類に囲まれて見えなくなるまで続いた。