ヤマアラシ
□私のイタズラ
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舞い戻ったお店はさっきとそんなに変わってなくて、途中で店長に用事があったらしい女性もカウンターの一番端に座っていた。
「お水にしとく?」
「あれくらいで本当に酔うとでも?」
そう尋ねると、だよね、と笑った。
店長が私たちに出したお任せのカクテル。それだけで何を言いたいのか分かったから、笑ってしまった。
「店長にはそう映ったの?」
「嘘はつかないよ、私は」
「よく言うよ、何が珍しいですね〜なのさ。碧さん、なんて呼んだことないくせに」
「あれは合わせてあげたの。」
言いながら渡されたドリンクは、さっき綾が飲んだものと同じ。クルリと氷を踊らせると、細かな泡が涼しげに弾ける。
「これ、本当に思ってる?」
「もちろん。二人ともね」
店長の顔を覗き込むと、相変わらずの笑顔を向けられた。
"あなたは魅力的です"
そんな意味合いを持つと、いつだったか教えてもらった。
「カルーアミルク出したのも、そういう事だよね」
聞いても知らないふりをしてボトルを磨いてるけど、口元がずっと意味ありげに上がっているから間違いない。
だって、綾がオーダーした時に一瞬目が合ったし。
あんなに甘いカクテルが持つ意味。
"悪戯"