shooting star

□やっつめ
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初詣。
柏手を打って熱心に手を合わせている恋人の横顔が、やたらと綺麗だと思った。

「何お願いしてたの」
「ん?」
「すごく真剣にお願いしてたから気になって」

参道を少し外れた、人の流れが緩やかな場所。そこでさっき引いた御神籤を確認しながら聞いてみる。

「いつもと一緒だよ」
「みんなが幸せでありますように?」
「うん」

あ、吉だ。なんて言いながら、ケンはどうだったと手元を覗き込んでくる。

「ケンも吉かぁ。お揃いだ」
「他にも何かお願いしたんじゃないの?」
「どうして?」
「いつもと一緒の割には長く手を合わせてたから」
「ふふ、よく見てるなぁ。もしかして見惚れてた?」

悪戯っ子みたいに微笑むえりは可愛いけれど、少し寂しい。
昔から努力の人だった印象は今も変わらず、大抵のことは一人でこなしてしまう。もっと頼って欲しいと思うのは…もっと甘えて欲しいと思うのは、全部知りたいのはワガママだろうか。
神様にお願いしたことで、俺が叶えてやれることはないだろうか。

「ケン?」
「見惚れてるのはずっとだよ」
「え、えぇ?」
「知らなかった?」

そう、ずっと。他の誰よりも、あいつよりもきっと。

「そういう歯の浮くような台詞、よく言うようになったのは何で?」
「彼氏だから、かな。本気で言って、ちゃんと受け止めてもらえるでしょ」
「なるほどねぇ」

マフラーから覗く耳や頬が赤く染まったのは、寒さのせいだけじゃないと思いたい。

「で?他には何をお願いしたの?」
「えぇ?まだ聞くの?」

ひとつ頷くと、仕方ないなって顔で眉間を指でぐりぐりされた。

「ケンとね」
「うん」
「ケンと茜が、怪我とかせずにバスケで活躍できますようにって」
「そっか。うん、ありがとう」
「さて、御神籤も結んだし…ケンはどこか寄りたいところある?」
「あぁ、屋台でいろいろ買ってさ、帰ろうよ」

えりが返事をする前に、冷え切った指先をまるごと包んで。
握り返された手の温かさを逃さないようにコートのポケットに入れれば、くすくすと笑う声。

「自主練は明日から?」
「うん」
「頑張ってね」

えりの願いを叶えるために。
明日、もう一人の幼馴染みに会いにいく。
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