リクエスト
□オフの過ごし方(2日目)
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「玲、あーきらー」
「ぅう…」
「…もう、起きないとおはようのチューしちゃうわよ」
ぎしぎしと軋む身体を起こす。
「おはよう玲。でも何で起きるの?」
「おまえが起こしに来たからだろ」
「今さら照れなくてもいーのに」
頬を人差し指でぐりぐり。その手を退けるのも億劫でなされるがままにしていると、今度はゆっくり頬を撫でるようになって。
その感触が昨晩の光景を思い出させた。胸の奥、じりじりともどかしい。
「身体、どう?」
「…おまえのマッサージが、マッサージで終わってたらな」
風呂上がり。
最終公演に響くといけないからという、至極まっとうな理由で頼んだはずだ。
そのうち、背中を押さえる度に漏れる吐息にスイッチが入ったらしく、そのまま事に及ばれてしまった。
「だって、ねぇ?」
「あー言わなくていい。とにかくシャワー浴びさせてくれ」
今日は客が来ると、昨日の帰り道で聞いていた。
『約束は10時だから』
時計を見れば短針は10の少し手前。
「おい……おい」
「ごめんねー?私も30分くらい前に目が覚めたから」
申し訳なさそうに両手を合わせる紗枝。良く見れば、その髪がまだ水気を含んでいることに気付いた。
「まぁいい。とにかくシャワー浴びるから」
「うん、わかった。その間に来たらお迎えしておくわ」
誰が来るんだよと口にしかけて止めた。きっと、またあの笑顔で内緒だと言うんだろう。
重い体に気合を入れてベッドを抜け出すと、バスルームへと足を進めた。
「あ、お邪魔してまーす」
バスルームから戻れば、へらりとゆるい笑顔をした来客が座っていた。
「ということで、来客は久我さんでした」
「えへへー」
学園中を(物理的に)飛び回ってた忍者は、あの頃よりも随分と雰囲気が変わった。笑顔は変わらずに、緊張感というか、鋭さが増した気がする。
タオルで髪を拭きながら、二人と少し離れた場所に座る。
「その節は大変お世話になりました」
「いやぁ、おねーたまのお役に立てて嬉しい限りです」
「で、こいつにはどう世話になったんだ?」
尋ねれば、久我はこちらに顔を向けてその笑みを深くした。何故か背筋がひやりとした。
「やだなー神門さん、あたしは忍者ですよ。アイアムジャパニーズニンジャ」
「忍者?」
「忍者のお仕事は忍んでこそですから」
言うと、胸の前でよく見かける印を両手で結ぶ。
「玲、怒らないでね」
「は?何を」
「久我さんに依頼をしてたの。玲のこと探して、って」