終わらない日々

□かさまつ8
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「ばーん!」

「おー…って……青葉お前…」

「どう?どう?」

「どうってこっちのセリフだ…どーしたんだよ…」

「あれれ?こんなはずじゃあなかったんだけどなあ」

「とりあえずなんかあったかいもん着ろ」

「…あれえ?」







黄瀬から下着いりません?と
ナゾの電話をもらったのは1か月ほど前。
女性下着が有名なメーカーの
割引チケットをもらったはいいものの
実は暫く彼女がいない黄瀬にとって
下着を買わないかと勧められる女子と言えば
私くらいのものだったんだろう。
カップ付きのタンクトップを長年愛用してるから
いらね、と一蹴したら
信じらんないっす、たまにはセクシー下着で笠松センパイのこと誘惑するっす!と
ナゾの剣幕で怒られたので
まあ勧められるがままに
ネットでふりっふりのブラジャーと
おそろいの紐パンにスリップまで注文して
それが今日の昼間届いたわけである。
そして、ふろ上がり、なう。
不思議そうな顔をした笠松さんは
私に自分のスエットを被せてしまうと
どーしたんだ一体とか言うもんだから
ことの顛末を一部始終ご説明したというわけである。





「つーか黄瀬なんなんだ女物の下着とか…」

「ほんとですよ。私いつもユ○クロだから今すっごく新鮮な気分です」

「そうかそうか、それはよかったな」

「笠松さんは、どうなんですか、こう、ムラっと来たりしないんですか!」

「んー、まー…それの所為でってのはねーかなー」

「…なんだと…黄瀬の嘘つき…」

「…でも、今のかっこのが、ヤベーかも」







***





青葉ってこんなに小さかったっけと
スエットからのぞく
細い手足や項に
ごくんと息をのんだ。
単純な、もんだな。




「笠松さん?」

「オレはこっちの方がいい」

「ちょ、えっと、あの、」

「しっかしお前筋肉あんのかよ」

「すみませんね贅肉ばっかで、ちょ、どこ、あ、」

「…文句あるなら早めにな」

「…ない、です」












背中に手を差し込んで
撫で上げると小さな声を上げる。
と、謎の異物感は、たぶん下着の金具で
そういえばいつもこう、
簡単に手を差し込める
ゴムしかなかったものだから
慌てて奮闘していると肩を押される。
身体を退くと青葉は起き上がって
もぞりとスエットを脱ぎ始めた。






「おまえ、」

「ふふ、ホックでしょ、自分でやりますね。いつも色気無いのですみません」

「な、おい、」

「ね、こっちは残しといてあげますね。折角の紐パンなんで、ちゃんと解いてくださいよ」

「っばっ!」
















五感が全部
持っていかれる。
大事に、優しく、したかった。
いつだって青葉の方が
一枚上手だ。
くちゅ、水音に
青葉は目を泳がせてより顔を赤くする。
俺だって、まだ、驚く。






「やだ、やぁ、」

「あ?」

「…ん、ちゃんと触って」

「だから!ホントそんなことばっか、言ってんな」
















解いてくださいね、と
あれほど強い語気だったものの
ぷつりと解けたリボンなんて
青葉は全く見ていない。
外気に晒されたソコに舌を這わせて漸く
慌てて俺の頭を押し返しにかかる。
誰が、やめるか。







***










「んー…んー、」

「どーした、寝んだろ」

「お米、炊いてなかった…」

「いーよ、食パンのこってたろ」

「んー、うん」











どこでスイッチが入ったかよくわからないけど
笠松さんという人は
こっちの体力のなさを、ですね
配慮しようって意識はどこへやら。
いつもはじめは壊れ物を触るみたいに
もどかしいことしかしてくれないのに。
ということでもう動くのもだるいし痛いし
我に返ってシャワーに連れてってくれたりする
笠松さんにされるがままになっているわけである。
ごつごつした大きな手だなあ。
思い切りよりかかったって
びくともしないんだなあ。
頼りになるなあ、




「かしゃまちゅしゃん」

「あ?」

「すき、だいすき」

「…知ってる」

「すっごいだるい」

「わりぃ」

「でもしやわせー」

「そーかそーかよかったな」

「うん、よかったー」






ぽい、とベッドに投げられる
素肌に綿のシーツはとっても心地よい。
ぽてりと電気が消えて
真っ暗な中笠松さんが布団に潜ってくる。
体中の倦怠感が重力になって
全身おふとんに沈んでいく。
耳元でゆっくりした呼吸が響く。
ん、おやすみ。





***



妙な下着とか付けても笠松さんは興味なさそう。でもまあ脱げば青葉だしな、みたいな。寧ろ彼ジャー萌えに目覚めてほしい。ところでずっとユニ●ロぶらとっぷなのは私です。男友達に話したら落胆されました。




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