短編小説

□王子様に目覚めのキスを
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折原臨也は池袋の街を歩いていた。
「ええ。――――そのようにお願いします。では、また。」
取引先からのしつこい電話を終えて息をつく。
勢力は小さい集団だが、その集団を中心に火種が上がると思うと、喜ばずにはいられなかった。
「ああ、今日はなんていい日なんだろう!輝かしい瞬間に祝杯をあげようじゃないか!」
嬉々とした表情でそう言うと、本当に祝杯をあげるために自宅のある新宿へと足を進めた。
上機嫌で歩いていると電話がかかってきた。
また取引先だろうか。うんざりしながら電話を取り出す。ディスプレイに表示された名前は見慣れないものだった。
「え、シズちゃん?」
シズちゃん――――平和島静雄。会えばまず最初にケンカをする恋人の名前。滅多に電話をかけてくることなんてなかったのに。
「もしもし。」
「遅いよ臨也!どれだけかかっているの?」
「何で新羅がシズちゃんの携帯で電話してくるわけ?」
「だって君、静雄からの電話だったら必ず出るだろう?」
「………」
否定できない。
「それより落ち着いて聞いてほしい。」
そこで新羅は改まって、
「静雄が交通事故にあって意識が戻らない。」
と言った。
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