ドール
□序章 惚気スピーカー
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あぁこの、刀剣ですか?
主が作ったんです。すごいでしょ。
鞘も無く、床に突き刺したまんまで、よくこんなに傷まずに保っているとはな。と、この前、来た人が、言ってました。なんか私は、詳しく知らないのですが、かなり凄いらしくて、どうしても欲しいと言って、その人にその鋼の鍛え方を書いた本を売ったのですけど…主、怒るかなぁ。
でも、やっと主の作った物が認められて、嬉しかったのです。
だから、ついつい。
我が主がどんな人かって?
主は、少し悲観的な人でした。
まあ、それはそれで主の魅力ですけどね。だけど時々、いきなり静かに泣いてたり、思い詰めた顔してたり、その時の憂鬱そうな顔も綺麗で私はいつも眺めていました。
すごく綺麗な人だったのですよ。外見は。
淡い亜麻色の髪に、綺麗な碧眼なんです。背も高くて……早く帰って来ないかな。
あぁ、えっと。
主の素晴らしさをもっと伝えなきゃ。
あと動物好きで、まあこんな山奥に住んでいるので動物も多かったんですよ。主は手なずけよ
うと頑張ってましたね。可愛いなぁ。
可愛い。うん。
それで―――
――以後、二百年前の惚気話が、延々と語られる。
無表\情に嬉々と、語る彼女の話を聞き流し、便利屋は、数日前の事を思い出す。