cern

□c=adamas〜rice〜
1ページ/1ページ


あ〜あ電車行っちゃった

と思ったらまた直ぐに次の電車がやってきた

朝のラッシュ時のこの微妙なダイヤの乱れのおかげで込んだ電車に乗らなくてすんだ

ラッキー♪

腰を下ろして直ぐにバッグから文庫本を出して昨日の続きを読む

2時の方角に強い視線を感知!

でもこんな事はしょっちゅうで慣れてる

だって私はいわゆる世間で言う美人

出会えばときめく美しい輝き

純潔で不屈、何事にも壊れない固さ

まるでダイアモンドのようなこの私

ページを捲るついでに2時の方角を見ると

バーコード頭の肥ったオイリーが

舌を長くベロリとさせながら私を見てる

そんな時はこうよ、パタンと本を閉じてオイリーをじっとガン見するの

ただひたすら無表情でガン見

みーるーな!って眼力込めてガン見

向こうがオロオロして二度と私を見ないくらい目で威嚇するの

フフ…勝った

私はまた文庫本に目を落とす

暫くして正面からの視線をキャッチ

ページを捲るついでに正面を見ると

色白の男子高校生が目と頬を丸くしてにこにこと私を見てる

あらま美形じゃない

こういう美形はあまり人をジロジロと見ない、彼等は私と一緒で見られる側だから

美形は顎に指なんて当ててずっとにこにこしてる

大丈夫?この子…頭弱いのかしら…

僕?綺麗なお姉さんに一目惚れした?

そんな風でもないな…

私は美形に気取って品よく微笑んでまた文庫本に目を落とすと

「ブブッ」

美形の噴き出しに顔をあげた

何噴いてんの?人の顔見て

は?ばかにしてんの?

口に手当てて上品に笑って…

私に対抗してんの?

僕の方が綺麗…

僕の方が上品…

なぁ〜んて思ってるワケ?

ムッカ〜何なの近頃の美形高校生ったら

もう無視よ無視っ!

スルースルー

駅について私が降りようと腰を上げると、美形から笑顔が消えて慌てて席を立つ

どう見ても私につられて降りようとしてない?

スタスタと電車を降りてホームを進むと

「すみません」

思ったより高い声で後ろから美形が私に声をかけてきた

ほらね?やっぱりナンパでしょ?

たまにあるのよね、自分がイケメンだからってじっと見て相手に声かけさせるパターン

でもそれをこの私にする?

ハッ!ありえないから

それで私が反応しないからついに追いかけて来たってワケ?

アハハ、勘弁してよね

私は大袈裟に振り返って品よく微笑んで美形に答える

「なぁに?君?」

美形は振り返った私を見て、またもや噴き出すのを堪えて笑ってる

ちょっと何なのこの子!失礼しちゃう

「ねぇ君…」

「そこ、ごはんつぶ、ついてるけど…」

顎に指なんて当てて…

って、私!?

ごはんつぶ!?!?////

顎についてる!?!?////

どこ?どこどこ!?////

「つけてたのよ」

顎からとってちょっとカピカピになったごはんつぶをパクリと食べると

くるりと後ろを向いてスタスタとクールにホームを進む私

はずかしーッ!!/////

食べた後歯を磨いた時にもそこにくっついてたの?アンタ!

家を出てご近所の方々に笑顔でご挨拶した時にも顎に居たわけ?

シャッター開ける店主さん達に挨拶しながら商店街通った時も

コンビニで野菜ジュース買った時も

派出所の前会釈しながら通った時も

改札を通った時も

エスカレーターに乗った時も

オイリーが見てた時も

アンタは私の顎にのうのうとカピカピさせてたワケ?

そんな恥ずかしい失態をあんな美形に笑われて指摘されるなんて…

くやしーーーい!!

それでも品よく口角を上げて微笑みながら

屈折率の高い私はブリリアントな輝きを放って

今日も会社に向かうのだった

つづく

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ