cern
□c=amadas〜sulli〜
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「オッパ、オッパァ、それでねぇ〜っ…」
いつも静かなこの車両にさっきから空気を乱す耳にここち悪い音声
「んもぉぅ〜オッパってばァ〜…」
ipadで電子書籍を楽しみながら静閑かな朝を過ごしたいのに
私の邪魔をしようっていうの?
「ハァんもォいぢわるぅ〜」
ん〜何!?この副鼻腔が炎症でも起こしてるような喋り方はっ!
「聞いてる?オッパァ〜」
この必要以上に延ばされた語尾
「んねぇ〜オッパァ〜」
読書どころじゃないじゃない
「んねぇ〜オッパってばぁ〜」
誰か切っちゃってあげて!
少しでも通過させないよう濾過しなくちゃ…
私は耳にかけた髪を元に戻しながら空間職から割り出した声の聴こえてくる十時の方向を静観して声の主を確認する
あらま、可愛らしい女子校生じゃない
平安時代にでも生まれてたらお侍さん達の間でちやほやされそうな?
おちょぼ口ではないけれど…そうね、それは白塗りと紅でごまかせるんじゃない?
針で刺したらパンッていいそうなくらいムチムチしちゃって
透明感のある、そうね…
cz?
キュービックジルコニア?
とそこでその平安美人にオッパと呼ばれる男子に見覚えが
ああッ!!
あの美形男子高校生!!
えっと名前、名前なんだったかしら…
ミタン?
じゃない?
ツミン?
違った?
タミン?
おしい?
あ゛〜ここまで出かかってるのにッ
「ねぇオッパ、テミンオッパってばァ〜」
テミン!!
そうよそれ!テミンよ!
今言おうとしたのよ
ふ〜ん、平安美人はテミンのなぁに?
オッパって呼ばれるってことはテミンの後輩?
なぁに、テミン、僕あんまり相手にしてませんみたいな素振りで
僕のファンなんだよね、困っちゃう、みたいな?
僕美形だからモテてる、的な?
あ!テミンこっち見た
何にやにやしてんの?
こっち指さして…ipad?
それ知りたかっただけのにって名前聞いた事蒸し返してるワケ?////
カバンから何かもぞもぞ出して見せて
あ゛ーっ!私のと一緒!
色まで一緒!
だからお姉さんに聞いたでしょ?本当でしょ?みたいな追い打ち?
教えてくれなくても自分で探しましたよ、みたいな自慢?
僕だって持ってるよipad、全く同じでも僕のが新しい、みたいな不敵な笑みなの?なんなの?
私はそれはよかったわね、楽しんでね、と上品にテミンに微笑んでまた読書に戻る
雑音が聴こえなくなってページが進むと思ったところで
誰かが乱階な視線をレーザービームでこの私に照射し続けているわ
誰!?
ビームの先を何気なく見ると
平安美人が私に飛ばしているじゃないの
私が見てもビームを照射するのをやめない平安美人
まぁ、この子、私に挑戦しようっていうの?
こんなお子ちゃまがこの私に対抗意識持つなんて
それは単なるお門違いというものよ?
同じ土俵じゃないの
あなたと私
グレープフルーツにたっぷりお砂糖かけて食べちゃうあなたと
塩とレモン無くってもテキーラショットガンガン呑める私の違い
平安時代とヴィクトリア王朝、
ポリエステルとシルク、
cz、キュービックジルコニア、安価で人工的に作られる物だから主要産地、特になしの分類と
c、ゴールデン・ジュビリー、ほかにカリナン、テーラー・バートン、センティナリー・ダイヤモンドなんか有名なダイヤモンドを産出している南アフリカのプレミア鉱山で産出された天然石ダイヤモンドなの、高価なの、おわかり?
それでもビームをやめない平安美人にそろそろ終止符を打つべき?
そんな時はこうよ、ipadを膝に置いて平安美人をじっと晴眼でガン見するの
ただひたすら無表情でガン見
みーるーな!って眼力込めてガン見
向こうがオロオロして二度と私を見ないくらい目で威嚇するの
フフッ…わかった?
私にレーザービームなんて向けても無駄よ
それよりあなたの副鼻腔レーザーで焼いて鼻通るようにしてあげてちょうだい
圧倒的勝利ににっこり微笑んだ所でテミンがこっちを指さして口をパクパクさせている
え?何?
ば?
か?
だ?
にっこり…
ばかだァ?////
ハァ!?何、人の事指さしてばかだとか言ってにっこりしてんの!?
ワケわかんないっ!
まだやってる!
ば、か、だ!にっこり
ば、か、だ!にっこり
ムッかぁ〜っ////
何回も何回も同じ事してばか面見せて、どっちがばかよ!
馬鹿にしてんの?
ばかって言った人がばかです、って幼稚園の時先生に教えて貰わなかったの?
何なの近頃の美形高校生ったら
もう無視よ無視っ!
スルースルー
駅について私が降りようと腰を上げると、テミンから笑顔が消えて平安美人を置き去りにしてついてくる
スタスタと電車を降りてホームを進むと
「あの…」
とまた高い声で後ろから美形が私に声をかけてきた
なんなの?面と向かってばかだとでも言うつもり?
言われたらあなたにもガン見よ、二度と私を見れなくなるくらいビーム照射してあげるから
この至近距離からホクロが取れる程されてみなさいよ、立ち直れないわよ
私は大袈裟に振り返って品よく微笑んでテミンに答える
「なぁに?テミン君?」
テミンは振り返った私を見て、顔を赤くしてまで笑ってる
ちょっと何なのこの子!失礼しちゃう
「ねぇテミン君…」
「ばかだん、ついてるけど…」
ハァ!?////
私のモヘアのカーディガンの肩を指さして、ばかがついつる!?
ばかがカーディガンについてるなんてなんでわかるのよッ!
「あのねぇ、ばかばかってねぇ…」
腰に手を当てた私のモヘアのカーディガンの肩にテミンが手を伸ばして数回摘むと
それを目の前に見せた
「ばかだんと、おなもみもついてる」
え・・・?
ムッカ〜////ばかだんって、このくっついてた植物の事言ってたワケ?
これなんだっけ、そうそう、アメリカセンダン草よ!
まぎらわしいっ!だったら最初っから
綺麗なお姉さん、アメリカセンダン草ついてますよ?
って言えばよくない?
おなもみだって着いてたんだから
おなもみついてますよ、って言えばよくない?
わざわざばかだんって
まぎらわしくない?
「つけてたのよ」
テミンからとって今度はカーディガンの左胸のとこへそれを当てつけ当意即妙な対応をすると
くるりと後ろを向いてスタスタとクールにホームを進む私
はずかしーッ!!/////
今朝の小学生達のやたらと眩しい笑顔が私に向いてたのはこう言う事だったの!
コンビニでのど飴買った時も
派出所の前会釈しながら通った時も
改札を通った時も
エスカレーターに乗った時も
平安美人にビーム飛ばしてた時も
アンタ達は私のカーディガンにのうのうとチクチクさせてたワケ?
そんな恥ずかしい失態をテミンに笑われて指摘されるなんて…
くやしーーーい!!
それでも品よく口角を上げて微笑みながら
屈折率の高い私はブリリアントな輝きを放って
今日も会社に向かうのだった
つづく