拍手夢
□ひば
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……ただ、最後に彼女に会いたかったな。
最近やっと長年の念願叶って結婚したというのに……。
「そんな事言って、奥様はどうなさるんですか!」
──バサバサッ
哲はそう言いながら、葉のしげった木の枝を僕に投げつけてきた。
……喧嘩売ってるの?
「恭さんのお供として、奥様から預かって参りました。“約束だからね”と奥様はおっしゃっておりましたっ!」
僕は朦朧とした頭を起こして、その枝を手に取った。
表は綺麗な緑なのに裏が白っぽい、少し肉厚な葉っぱ。
間違いようもなく、これは檜葉(ひば)だ。
僕はプロポーズをした時に彼女が言った言葉を思い出した。
──『恭弥さん、貴方の仕事はとても危険ですから、結婚するからには、いつかは貴方の死に顔を拝まなければならない日が来るだろう事は覚悟しています。ですが、最後まで生きる事を諦めないで下さい。もう自分の人生を全うしたから悔いはないと言うのなら、私の為に生きて下さい。……約束ですよ。』
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