拍手夢

□勿忘草
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ですが、もしルドルフがベルタの手を取ったら、ベルタ共々川の濁流にのまれてしまうでしょう。


ルドルフは先程足を滑らせる前に摘んだあの花をベルタに向かって投げました。


「ごめんね。でも、僕を忘れないで。」


ルドルフはその言葉を最後に、川の中に消えていきました。


ルドルフが投げた花は、ベルタの手の中に落ちました。


『ルドルフッ……嫌、嫌ぁー―っ!』


ベルタの叫び声は、川の濁流にのまれていきました。


……ルドルフと一緒に。






ベルタはそれから一生、ルドルフから贈られたその花を髪に飾り続けました。


『ルドルフ、私は貴方の事を忘れないわ。ずっと、ずっと愛してる。』


死さえも二人を分かつ事はなく。

そう、それは何よりも純粋で、色褪せる事のない、真実の愛。



Photo by季節の花300

2008年 2月前半掲載

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