拍手夢

□さねかずら
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パタン


あ、彼女が入ってきた。


本当は今すぐに抱きしめにいきたいんだけど、それを抑えて、僕はいつも仕事が忙しいふりをする。


彼女の構って欲しそうに見つめてくる目が好きだから。


それに、好きな娘程いじめたくなるって言うしね?


………


……………


……おかしい。


いつもなら、寂しさに耐えきれなくなった彼女が僕の名前をよびながら近づいてくる頃なのに、今日は何もない。


どうしたのかと思って彼女のほうを見ると、彼女はソファーに座りながら、うつ向いて膝に抱えた鉢植えを見ていた。


「ねぇ、今日はどうかしたの?」


僕が彼女に近づきながらそう言うと、彼女はゆっくりと顔をあげながら口を開いた。


『……今日は、ね…お別れしにきたの。』


僕と彼女しかいない状況で、誰と?なんて分かりきった事だけど、僕は信じられなくて聞き返した。


「一体誰とお別れするっていうの?」


お願いだから、僕だなんて言わないで。



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