拍手夢
□ガマズミ
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僕は、彼女が最近よく応接室に飾る白い小さな花を見ながら、口を開いた。
「ねぇ。」
『なぁに?』
僕が呼びかけると、彼女はにこやかに返事をしてくれた。
「もし僕が、死んだら……」
僕は彼女の方に向き直って、続けた。
「…君は、どうする?」
『させないわ、そんな事。』
彼女は微笑みながら、でもしっかりとした口調でそう言った。
「させないって言っても……そんなの…。」
人なんて、いつ逝ってしまうか分からない。
だから僕は怖いんだ。
死ぬ事が、じゃない。
彼女と死別する事が、怖いんだ。
いつか、どっちかが逝ってしまうんじゃないか……
今、彼女といられて凄く幸せだからなのか、僕は最近ずっとこんな事を考えてしまう。
『そりゃぁ、いつかは誰しも天に召されるわ。でも、それは天寿を全うしてからよ。それまでは、絶対死なないし、死なせない。…知ってる?愛は死より強いのよ。』
僕は彼女を抱きしめた。
何て彼女は、優しくて、強くて、愛しいんだろう。
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