拍手夢

□ガマズミ
1ページ/2ページ




僕は、彼女が最近よく応接室に飾る白い小さな花を見ながら、口を開いた。


「ねぇ。」


『なぁに?』


僕が呼びかけると、彼女はにこやかに返事をしてくれた。


「もし僕が、死んだら……」


僕は彼女の方に向き直って、続けた。


「…君は、どうする?」


『させないわ、そんな事。』


彼女は微笑みながら、でもしっかりとした口調でそう言った。


「させないって言っても……そんなの…。」


人なんて、いつ逝ってしまうか分からない。


だから僕は怖いんだ。


死ぬ事が、じゃない。


彼女と死別する事が、怖いんだ。


いつか、どっちかが逝ってしまうんじゃないか……


今、彼女といられて凄く幸せだからなのか、僕は最近ずっとこんな事を考えてしまう。


『そりゃぁ、いつかは誰しも天に召されるわ。でも、それは天寿を全うしてからよ。それまでは、絶対死なないし、死なせない。…知ってる?愛は死より強いのよ。』


僕は彼女を抱きしめた。


何て彼女は、優しくて、強くて、愛しいんだろう。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ