拍手夢
□すみれ
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彼女はいつも幸せそうに、ニコニコ笑っている。
──『見て下さい、雲雀さん!空が凄く綺麗。』
──『雲雀さん、今日、家の庭で菫を見つけたんです。土ごと持って来たので応接室に飾らせて下さいね。』
──『わあ、雲雀さん!ピヨちゃんが私の手から餌を食べてくれました!可愛いですね。』
──『あ、菫の蕾がふくらんできましたよ!咲くのが楽しみですね、雲雀さん。』
まるで起こる事全てが愛しくて愛しくてしょうがない、といった感じだ。
「ねえ。」
僕はさっきから僕の仕事の邪魔にならないように、ピヨと遊んでいる彼女に呼び掛けた。
『はい、何ですか?』
「今、幸せ?」
彼女は幸せそうに笑いながら言った。
『幸せですよ!』
「こんなに何でもない日常が幸せなの?」
僕がそう言うと、彼女は続けた。
『例えば空が青かった事とか、朝から雲雀さんと校門で会えた事とか、道端に咲いていた花が綺麗だった事とか、そんな事全てが嬉しくて、幸せなんです。』
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