OriginalNovels

□Dangerous Life Bible
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「ウザイ」

初夏の風薫る五月某日。
丘河中学校2年3組の教室でそんな言葉が漏らされた。
言い放ったのは今日転校してきたばかりの少年、御神涼太郎。ツンツンとした長めの黒髪にすらりと伸びた手足。身長は175センチ前後。切れ長な三白眼を除けば、女子の方から言い寄ってきそうな風貌の少年。
転校生は初日、後ろ足で立つレッサーパンダや多摩川に現れた海豹の如く注目される。
特に涼太郎は自己紹介の時に担任教師が言った"父親が大手パソコン会社の社長"という余計な一言のせいで注目度が60年ぶりに帰郷した旧日本兵ほどまでに上がっていた。
そんな中、今まで殆ど口を開かなかった転校生の一言に周りのクラスメイトは硬直する。教室を静寂が包む。
暫くして、1人の女子生徒が

「えっと・・・ゴメンね」
と言った。
本心は腹腸が煮え繰り返っているのだろうが、初対面であるのと体面を考慮して控えめに言った。
その言葉を境に今まで煩わしいほどに取り巻いていた生徒達が徐々に散会していった。
更に暫くすると、涼太郎に対する敵意の視線が露になる。
コレで涼太郎の立場は決まった。"イジメ対象"もしくは"触れてはならない存在"━━━━━━。
コレが涼太郎の危険な生活の始まりだった。
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