蘭拓連載

□桜前線 〜小さな恋の物語〜
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【霧野邸・縁側】(拓人視点)
拓人:「空が…綺麗だな…。」
青く澄み渡った空に,淡い桃色の花びらがひらひらと枚散るのを,ぼんやりと眺める。
都で忙しく過ごしていたのとは似ても似つかない,のどかな時間。
和泉に来てからまだ2日しか経っていないにも関わらず,暖かなこの空気に馴染み始めている自分に少し驚くが,こうして俺がこの場所に馴染めるようになったのは,この春の空気のように優しい"彼"のお陰かも知れないのだけれど。
蘭丸:「たーくとっvV」
ガバッ!
拓人:「わっ!///」
――……と,物思いに耽っていると,後ろから誰かに抱きつかれた。
瞳の端に鮮やかな桃色の髪が写り込んだ。
蘭丸:「何ぼーっとしてるんだ?こんなにいい天気なんだから,じっとしてるなんて勿体無いぞ!」
そう言って明るく笑う蘭丸に俺も微笑み返した。
霧野蘭丸……。
俺にとって,初めて出来た同年代の友達。
蘭丸:「なぁ,今日はちょっと村の方に遊びに行こうぜ!」
拓人:「え?でも,勝手に屋敷を出たら皆が心配するんじゃ…。」
蘭丸:「少しぐらいなら大丈夫さ!俺,拓人と行きたい所があるんだ。」
拓人:「行きたい所って?」
蘭丸:「それは行ってからのお楽しみだ。どんな所か知りたいだろ?」
拓人:「あっ,あぁ…///」
満面の笑みを向けられ,また頬が熱くなる。
蘭丸:「じゃあ,今から行こうぜ!」
拓人:「そう…,だな。」差し出された蘭丸の手をそっと握りかえして立ち上がった。
あの日,俺達はただ春の日の散歩に出ただけだった。
しかし,この時の判断がその後の俺達の運命を大きく変えることになる。
その事に俺が気づいたのは,それから何年も経ってからになるのだけれど…。
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