異邦人大系 第三部

□Happy halloween chaos night? (V)
7ページ/7ページ

 









「───ああ、こんな所に居たのか」


「?」



優人がその声に
背後を振り仰ぐと
一人の男が立っていた。
白衣姿に眼鏡を掛けて
一見、祟場にも似た風貌
ではあるが、何処か優人は
彼にギスギスしたものを
感じ取っていた。
彼に染み着いた
薬品の臭いが鼻を衝く。





「……その猫、君が捕まえてくれたのかな?」


「あ、はい…」


「良かった。さっきからずっと探していたんですよ」


「そう、なんですか……」


『シャーッ!!』


「っ、……??」



三毛猫は再び毛を逆立てて
男へと威嚇をする。





「参ったなぁ〜。すっかり嫌われちゃって………あ。悪いけどその猫、返して貰える?」


「…え。あ、はい……」



男は暴れる猫を受け取り
持っていたカゴの中へ
無理矢理押し込んだ。





「…………っ、」


「大事な研究用の猫でね。可哀想だけど………」



言葉を詰まらせた優人の右手へ
男がふと、視線を止めた。





「…君、血が出てるじゃないか。コイツに引っ掻かれたの? 手当てしなきゃ」


「だ、大丈夫です。このくらい…、平気です」


「でも、バイ菌が入ったら大変だ。それに、猫を捕まえてくれたお礼もしたいし───」



優人へ男は微笑を湛えるが
何処か冷え冷えとしたものを
優人は感知し、言葉が
上手く繋がらない。





「君、祟場さん所の子らしいね。さっき、見掛けたよ。先生は何? 苧原第一指揮官と大事なお話し中か何かなのかな?」


「え、ええ…」


「…そう──、」



カチャリと眼鏡のズレを直す仕草に
優人は視線を外すと立ち上がり
軽くジーンズと服とを払った。





「───ね。ちょっとだけ僕の部屋に来ない?」


「え? …あ、でも。僕、戻らないと。実は先生に黙って来ちゃったから」



優人がその場を後に
しようとした時だった。
男の手が優人の肩を掴む。
ハッと優人は男を見上げた。





「…ちょっとだけ。ね? それに。面白い物、見せてあげるから────」


「あの、僕はっ……」



言葉を完全に吐き切らない内に
男は優人の背を押して歩き始めた。





「……あ、あのっ、困りますっ…!」



しかし。優人は上手く抗えず
男の部屋へと促されるまま
連れて行かれる───…。




 
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ