異邦人大系 第三部

□Happy halloween chaos night? (Z)
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『─あ。先生、おはようございます』


『──お前っ…、』 ←酷く脱力


『いやぁ〜、やっぱり。元の身体って良いものですね。水道の蛇口にも、ガスコンロにもちゃんと手が届きますし…。あ、あと。冷蔵庫の奥や上の物もよく見えるし──』



そこにはキッチンへと立つ
年相応の容姿に戻った
優人の姿があった。





『あー、にしても。まさか、一晩で一気に戻るとは…。身体、痛いなぁ〜……でも! 折角、戻れたんだし、今日の朝食の玉子焼きくらいは俺、作りますねっ! 焦がさないようにしなきゃ………って、先生──?』



久し振りに自身の服へ袖を通し
エプロン姿で腕捲りに
フライパンを持って──。

そんな所をグイと引かれて
優人はキョトンと瞬いた。





『…………………、馬鹿野郎っ…』


『………、えへへっ。すみません、本当。勝手に無理矢理押し掛けて、勝手に帰ったりなんかして。急に身体が元に戻り始めたもんだから俺、慌てて自分の部屋に戻ったんです。俺、焦ってたせいでつい、言葉の一つも掛けずに。すみませんでした………それから、えーっと……』


『………、もういい。もう、喋るな…』


『……先生、怒ってます?』


『んな訳、ないだろ…』


『良かったぁ〜』



後ろから自分より頭一つ小さい
優人の首へと腕を回して。
慣れないであろう手で
後ろへ簡単に縛った優人の髪が
抱き締める祟場の襟首を軽く擽った。





『先生。皆、ご飯に来ちゃいますよ。早くしなくちゃ』


『…うん、判ってる───』


『も〜……』



そこへ──。








『──誠人、お前。優人に何してる…』


──ギクリッ


『…全く、ウチの男共と来たら───』



愁水が溜め息だけを
キッチンへと残し、
リビングへ引っ込んだ。

祟場は衝動的にとはいえ
自身の取った行動へと、また
それを師である愁水へうっかり
見られてしまった事へも固まって、
瞬き祟場の事を見上げる優人と
その場へ一時、フリーズする。





『…おや、ネコくん。元に戻っちゃったんですか?』


『あ。イノセさんも、おはようございます』


『……惜しい事をしましたねぇ』


『何、仰ってるんですか』


『んじゃあ。今からでも構いませんから、先生の見ている前で───』


『はい?』


『おぉっ! ニュートン! 良かった! 薬が効いて来たんだねっ! 本当に良かった…!』


『おぉ〜、ニュートンだ。おっきいニュートン見るの、何だか久々な気がしますデス。わーい、逆に新鮮〜』


『あ。真木さん、黒衣さん。おはようございます! お陰様でこの通りです! 本当に、ありがとうございますっ!』


『…おや、祟場さん。おはようございやす。どうしやしたか、こんな所へ立ち尽くして?』


『いえ。何でもありませんよ…。ちょっと、放心してただけで』


『ほう?』


『あ! おはようございます、烈将さん!』



朝の時幻党に久し振りの
明るい優人の声が響いていた──。







 
おわり
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