異邦人大系 短編集
□過誤の鳥 〜エピソード〜
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#エピソード04 『“境田 蒼”という男』
『──いやぁ〜。境田さんのお陰で助かりました〜』
掃除を済ませ、元の配置へ戻し
書類棚へとファイルらを
仕舞いながら瑠璃子が言った。
『このくらいの事なら、幾らでも気兼ねなく言って。──島原先輩、(笑)』
『先輩? うちが先輩? えへへー、何や照れるなぁ〜。』
『クスクス…、それも貸してください。僕が仕舞いますんで』
『おおきに。うち、チビやから助かるわぁー』
『いえいえ──、』
そこへ、階段を軽く
駆け上がってくる音が聞こえた。
事務所のドアが開いて
王取が姿を現す。
『お疲れ様です』
『シゲくん、お疲れさん』
『──蒼、お前。車のタイヤ交換とか出来る? 直ぐそこのコンビニの駐車場でパンクあって、ウチに頼めるかだと』
『うーん。やるのは俺、やりますんで。所長、指示とかしてくれます? 何か別件とか入ってましたか?』
『いや。お前やってくれんなら問題ない。待たせてっから、先に連絡入れちまうぞ』
『乗用車ですか? 大型だったりします?』
『軽だから。直ぐ、出る準備しろ』
『はい。──島原さん、残り一人で大丈夫?』
『あとは粗方、届きそうやし。何とでもなりますんでご心配なく』
『それじゃ。いってきます、島原先輩──』
『いってらっしゃい』
瑠璃子は二人へと手を振る。
蒼は、帽子の代わりに
頭へタオルを巻くと
王取と連れ立って
事務所から忙しなく出ていった。
『シゲくんも境田さん入ってから、張り切っとるなぁ。うちも頑張らへんとな───』