異邦人大系 第一部〜第二部
□エピソード編
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-01.黒い影-
暗い校舎内をライトの光が行ったり来たりしている…。
「くだらねぇ」
「くだらない」
「まぁ、そう言うな。二人と…『そうですよぉ! これも立派なお仕事ですよぉ!!』…花、黙りなさい」
『はぁ〜い』
七不思議の一つの探偵さん達…。
…そんな様子を同じ校舎内の一階上、窓辺から見下ろす黒い影があった。
――ガランッ
年期の入った大玉の鈴を鳴らし、何処からかもう一つの影が飛び出してきて、もと居た影の頭部にひっついた。
「…遅いぞ?」
『悪かったっちょ、…にしても此処はウマいモンの宝庫っちょねぇ〜』
「そぅかい…」
『また、連れて来て♪』
「………」
『ね? …ねッ?』
「…好きにすれば」
『にょっ!!』
後から来た影は、ゴロゴロとのどを鳴らして甘えてくる…。
その三角耳の丸っこい影を若干、ウザそうにも撫でる黒い影。
「…帰るか」
階段を降りる足音は、軽やかで皆無に等しい。
左手には外履、右手には厚い書物。
頭に謎の影を従えて…。
下の階に降りると、廊下に響く数人の声。
その声の主達には気付かれない様、息を潜め、足音を忍ばせる…まるで猫の様に。
用があるのは、彼らと自分のちょうど中央辺りにある曲がり角。
彼らは会話に夢中で、こちらには気付いていない。
(…この角さえ、曲がれば……)
彼らとの距離は、今までで一番近い…と、突然、男性教諭が少女に抱きつき、ぶっ飛ばされた。
『…ぷッ』
頭のソレが、思わず吹き出した。
(バカ…ッ!!)
一気に踏み切り、曲がり角へ飛び込む。
(…気付かれた?)
そっと体勢を立て直し、振り向く。
(セーフ…)
再び歩き出そうとした時、殺気が一気に近付いてくるのに気付いた。
驚き振り返ると、そこには月の逆光を浴び、獣人化した少年が立っていた…。