異邦人大系 第一部〜第二部
□復讐の紫炎〔起〕
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*
やっと部室まで辿り着いたが、あんな事もあってか祢津也と姫嬉の顔を見る事が何処となく怖かった。
部室前の廊下で只、立ち尽す―。
「陣内…?」
「―っ!」
後ろから急に声を掛けられギクリとした。
「どうした? 中に入らないのか?」
相条の声に気が付いて祢津也と姫嬉が振り返る。
優斗は気不味くなって居ても立っても居られなくなり、自分でも気が付かない内に走り出していた。
「陣内、何処行くんだ…っ?!」
呼び止める相条の声すら振り切って―。
*
「―何逃げてんだ、俺は……」
勢いで四階の屋上まで来てしまった。
乱れた呼吸を風に吹かれながら整える。
「はぁ…」
溜め息を一つ吐き出し、出入り口の扉に背を預けた。
目を閉じる―。
『―どうかしたのか?』
どうやら近くに居たらしい。
「…何でもないよ」
目を開け、遠くの空を見た。
『……何かあったんだな…。俺に隠し事は出来ないよ』
「うん…。そうだな…」
扉に寄り掛かったまま、その場にズルズルと座り込んだ。
相手はそれ以上、何も言わなかった。
「―勘左ェ門」
『何だ?』
「…悪い、少し一人で考えたいんだ―」
『分かった…。但し、何かあったら直ぐに俺を呼べ。いつでも駆け付けてやる―』
そう言葉を残し、勘左ェ門は姿を消した。
「……ありがとな」
勘左ェ門が消え、完全にひと気の無くなった屋上で一人、顔を伏せて蹲った。
遠く聞こえる部活動の賑わう音の中、暫しの時間を過ごした。
――キーンコーンカーンコーン…、キーンコーンカーンコー…ン……
チャイムが鳴る―。
優斗は一つの決断をして立ち上がった。