異邦人大系 第一部〜第二部
□目覚めの朝
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あの晩から二日経った日曜日の朝。
姫嬉は優斗の手の包帯を取り替えていた。
優斗はあれからと言うもの元気が無い。
「―陣内君、きつくない? 痛かったら痛いって言ってね」
「……うん。大丈夫…」
上の空な返事に姫嬉は優斗を見上げた。
優斗はボンヤリと窓の外を眺めていて、姫嬉はそれに溜め息を付いた。
――ギリギリギリギリ…
「……っ、痛たたたッ?! ひ、姫嬉さん??」
「なに? 陣内君、何も言わないんだもん。痛くないのかなぁ〜と思って」
「……ひっ、姫嬉さん? …な、何か…怒ってる??」
「…別に」
どうして弱さ、見せてくれないの…なんて言えない。
男の子だもんね。
でも…仲間なんだから、少しぐらい―。
そんな時、寝室から相条が顔を覗かせた。
「お〜い。二人共、喜べ。ネヅが目、覚ましたぞ」
「え! センセ、それ本当…」
――ビンッ!
「!?」
いきなり手元の包帯が引かれて姫嬉は目を戻した。
「―あっ、ごめん姫嬉さん。これ後でいいからさ、早く祢津也の所に行こっ!」
腕を包帯により引き止められ、ソファーにしゃがみ込んでソワソワとする優斗の様子に、ちょっぴり祢津也に対するジェラシーを感じてみたりして…。
(何なのよ、その変わり様は…)
「ねっ、ねっ、姫嬉さんってば!」
子供の様に急かして来る優斗に若干の苛立ちを感じ、姫嬉はその足元を払った。
――パシッ…
「うわっ??!」
すっかり向こうに気を取られていた優斗は呆気なくソファーへと倒れ込む。
「ひ、姫嬉さん?? …いっ、いきなり何すんのさ!?」
ソファーにひっくり返ったまま、優斗が驚いて姫嬉を見た。
「…すぐ済むから、もう少しだけ待って」
姫嬉は冷めた表情のまま、ヨレた包帯を直す。
「でも…」
優斗が言い掛けた時、姫嬉の目がギラリと光った。
――ドスッ…
「…え゙っ」
身体を起こし掛けた優斗の頬を掠め、氷の槍が真っ直ぐにソファーを貫いていた。
頬に感じるその冷気に、優斗はザァーッと一気に顔から色を失う。
青ざめた優斗は完全に言葉を無くした。
「―おい、コラ姫嬉。ネヅに続いて今度はお前か。人んち壊すなよ、頼むから…」
相条は片手で顔を覆った。
姫嬉は気にせず無言のまま、優斗の腕へと包帯を巻いている。
「……まあ、いいさ。大人しくしとけな、優斗。姫嬉は怒らすと後が怖いから―」
「………はい;;」