異邦人大系 第三部
□in 時幻党
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『───時幻党へ、ようこそ!! マンマミーア!!』
パンッ、という音と共に
クラッカーが弾け飛び
ハラハラと紙吹雪が
頭上へと降って来た。
『………ジジイ』
両手に大荷物、更に
優人を担いで来た祟場は
その盛大な歓迎を
喜ばなかった。
フルフルと静かな怒りに
買い物袋をぶら下げた手が
小刻みに震えている。
『──ええっ!? タタリン、まさか怒ってる?? 怒ってるのかい?? くっそー、クラッカーだなんて在り来たりで地味過ぎたか…。いっそのこと花火でもドカンと打ち上げるべきだったかなぁ〜(ブツブツ)』
『人の話、聞いてたのかジジイ!!』
『ひゃいっ!?』
『優人が怪我した。俺も命を狙われてる。暫くの間、此処(時幻党)へ匿ってくれ──』
『え〜、成る程。かくかくしかじか…って、え゙ぇっ?!! ユートン、怪我したの!?』
『…ははっ。真木さん、先日はどーも───』
『だから、さっきからそう言ってるでしょうがっ!!』
祟場に負ぶわれその背から
申し訳なさげに顔を覗かせた優人を
振り落とさんばかりの勢いで
祟場が真木を叱責すると
漸く、事を理解した真木が
一時デフォルメを解き
クラッカーを投げ捨てて
二人の元へ駆け寄って来た。
『どれどれ…』
『応急処置で止血はして来ました…。只、既に失われた血液の量がかなり多いので──』
『うんうん。これは一見、銃による傷痕だけれど只の傷痕じゃあないね』
真木のふざけた姿しか
見た事のなかった優人は
その分析力の鋭さに軽く驚く。
『大丈夫、大丈夫。直ぐに良くなるよ』
『…は、はい。お世話お掛けします』
『いいよ、いいよ。気にしないで。前にレッショー君の腕がもげた時にも、僕と愁水くんの二人で三日掛かりで修理したから』
『えっ!? 腕がもげた?? てか、修理って…??』
『それじゃあ、僕の実験し……治療室へ、れっつらごー♪』
『え。ちょっ…今、実験室って言い掛けませんでした?? いや、ちょっと待って下さい!! まだ僕、心の準備が───』
ギャー!!という断末魔と共に
治療室とやらへ優人は真木の下
強制連行されて行った。
『…………っ、』
祟場は一抹の不安を覚えつつ
二人の背中を見送った。
そこへ、駆け付ける
一人の小さな人影。
『誠人、帰ってたのか』
『!、先生──』
『どうした。顔色が悪いな』
『……ちょっと色々ありましてね』
『そうか。取りあえず奥で休みなさい』
『ありがとうございます…』