異邦人大系 第三部
□時幻党の朝 〜魔王様とネコ〜
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朝の時幻党。微かな物音と
気配にリビングを抜けて
キッチンを覗き込むと
そこには一匹の
ネコの姿があった。
パタパタとエプロン姿で
食器の片付けに勤しむ。
暫し、見入ってその場へと
立ち尽くしてからイノセントは
何やら思い付いた風に口元を弛めた。
寧ろ。そっと、いつものように
気配を忍ばせネコの背後へ……。
『─────おはようございます、ネコくん。(抱き付きィ〜)』←セクハラ
『いぃやぁああああああああっっ?!!』
これ。これが面白い。
『…ぶっ』
『朝っぱらから止めて下さいよ! 全くー、心臓に悪い…』
いいねぇ〜。反応がまだ初々しくて。
何処かの誰かさんとは大違い。
人間とはどうやら免疫、
耐性のつく生き物らしい。
それらはどうもつまらない。
退屈は嫌いだ。日々、何かしら
面白そうな事を探してる。
そうでもしなきゃ
生き甲斐ってもんも
碌に感じやしないだろ?
気の遠くなる程、長く生きてる。
だからこそ、そう思う。
因みに、俺に気配を消させたら
右に出る者はそうは居ない。
『……、おかえりなさい?』
『え。嬉しいですけど、疑問系ですか?』
『一瞬…、イノセさんの匂いがしました。それがイノセさんの匂いだと、気付くのに時間が掛かりましたけど』
『おや? 僕の質問はナチュラルスルーですか』
『お茶、淹れますね…』
そう言ってネコは何処か
ぎこちなく微笑む。