異邦人大系 短編集

□おれがオンナで、相手はネコで。
20ページ/20ページ

 







漸く、合点がいった。
コイツが何を恐れ、
何にそこまで躊躇っているのかを──…。





『…ごめんなさい──、とんだ意気地なしな所をお見せしちゃって……。ますます幻滅したでしょ───??』


『─────、』





ネコの目に浮かぶ涙──…。

そんなにまで深刻な事なのかよ、と
茶化して笑ってやりたかったが
コイツを今、ここで逃がしたらば
オレの人生がそこで終る、と
苦笑って相手の頬へと手を添えた……。








──ッ、………


『??!、……ふっ、…あ、───?!?!??』



深く口付けて、舌先を押し込む。
僅かに身を引いたネコの首に腕を回して
尚も口内を侵せば。先程までと違って
容易くベッドへと捩じ伏せられた。





『───待って…、イノセさ…………だから、…それじゃ……』


『──なあ、試してみろよ』


『…え?』


『お前が、オレにとって。何なのか。試してみろっつってんだ───』


『………………………、』


『…………………』



おそるおそる、イノセントの
頬へと優人は手を触れる。
小刻みに震えるその手に触れて
イノセントは目元で笑ってみせる。

そっと、イノセントの頭を
引き寄せてきた優人に
再び、静かに目を閉じ瞑った──。

優しく触れるだけのキス。

数秒間のそれの後、離れた優人と
イノセントは暫し見つめ合った。





『よく、できました───』



笑ってイノセントがそう呟くと
優人の片目から涙が一筋
流れて髪を濡らしていった。





──ッ、………



イノセントは優人へと
そっと口付ける。
優人からのイノセントを
抱く腕にも僅かに
力が込められて。

深く、浅く。何度も。
二人は唇を重ねあった───…。



…………………………
……………………
……………








『……………んっ──、』



イノセントは目を覚ます。





『頭、いってぇ……』



ゆっくり身体を起こすと、
枕元にて眠る優人に
ふと気付いた。

記憶を遡り、
胸が僅かに熱くなって
無言で優人の頭を撫でる。








『────そうゆう事だ。馬鹿ネコ……』




 

次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ