異邦人大系 短編集
□おれがオンナで、相手はネコで。
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漸く、合点がいった。
コイツが何を恐れ、
何にそこまで躊躇っているのかを──…。
『…ごめんなさい──、とんだ意気地なしな所をお見せしちゃって……。ますます幻滅したでしょ───??』
『─────、』
ネコの目に浮かぶ涙──…。
そんなにまで深刻な事なのかよ、と
茶化して笑ってやりたかったが
コイツを今、ここで逃がしたらば
オレの人生がそこで終る、と
苦笑って相手の頬へと手を添えた……。
──ッ、………
『??!、……ふっ、…あ、───?!?!??』
深く口付けて、舌先を押し込む。
僅かに身を引いたネコの首に腕を回して
尚も口内を侵せば。先程までと違って
容易くベッドへと捩じ伏せられた。
『───待って…、イノセさ…………だから、…それじゃ……』
『──なあ、試してみろよ』
『…え?』
『お前が、オレにとって。何なのか。試してみろっつってんだ───』
『………………………、』
『…………………』
おそるおそる、イノセントの
頬へと優人は手を触れる。
小刻みに震えるその手に触れて
イノセントは目元で笑ってみせる。
そっと、イノセントの頭を
引き寄せてきた優人に
再び、静かに目を閉じ瞑った──。
優しく触れるだけのキス。
数秒間のそれの後、離れた優人と
イノセントは暫し見つめ合った。
『よく、できました───』
笑ってイノセントがそう呟くと
優人の片目から涙が一筋
流れて髪を濡らしていった。
──ッ、………
イノセントは優人へと
そっと口付ける。
優人からのイノセントを
抱く腕にも僅かに
力が込められて。
深く、浅く。何度も。
二人は唇を重ねあった───…。
…………………………
……………………
……………
『……………んっ──、』
イノセントは目を覚ます。
『頭、いってぇ……』
ゆっくり身体を起こすと、
枕元にて眠る優人に
ふと気付いた。
記憶を遡り、
胸が僅かに熱くなって
無言で優人の頭を撫でる。
『────そうゆう事だ。馬鹿ネコ……』
終