MONOCHROME 〜白と黒の書〜
□〈白〉の書 『彼の唄、温もりに懐古的“熱”を宿して〔弐〕』
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安部邸、書斎──。
『───おい、主。入るぞ』
──ガラァッ…!!
『……、白蛇。戸を足で開けるんじゃありません。行儀が悪い』
『…んだよ。仕方ねぇだろ、手ェ塞がってんだからよー。文句があんなら手伝えよ、玄武──』
『すみませんが。此方も今、手一杯なんですよ。──ご苦労さまでした。その書物らは、奥の棚にでも適当に積んで置いて下さい』
『ったくよォ…。無駄に広い屋敷に住みやがって──。こんだけの資料だ、何だ。一体、俺が何往復したと思ってんだよ………』
『だいぶ、様になってきたじゃありませんか。足で歩く姿勢から始まって。立ち振舞いから、何からと。───最初の頃は貴方、持久力の方が長続きしなくて。よく、直ぐにへばっておられましたものね。…本当に、大した進歩だと思いますよ?』
『へーへー。人を煽てるのがお上手なこって…』
『何を照れてるんですか──。お疲れさまです。お茶でも淹れて差し上げましょうか?』
『………、いい─。飲みたきゃ自分で淹れるからよ』
しゃがみ込んで項垂れた
白蛇の様子をチラリと見やり
フッ、と玄武は笑みを浮かべる。
『…………………………、(変な所で素直だったり、他人に気遣いしてみたり。人間らしさの方も日々、成長しておられるようで───)』