電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□輪廻を繋ぐ者
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よく見る夢と現実が一致した瞬間。
俺の中で何かが崩れた。
ずっと抱えていた幻想は
愛とよく似た“執念”で。





『〇〇、お前……』





不服そうに俺を見たその眼を忘れない。
いつか俺を見上げた眼差しで
多分、比べていたんだろう。
でもきっと。俺が愛せるものなんて
もう何にも残ってないんだよ。君以外。
君と寸分違わずに。





『……どうして、こんな』





そう。俺は、あいつじゃない。
君が焦がれた男じゃない。









…………………………








死ねば。少しは楽になるらしい。





『〇〇、〇〇!!』





血まみれの腹に少し触れたら
右手は真っ赤に染まった。
それはとても温かく湿っていて
ただ外に外に溢れ出して行く。
あぁ、これが『死』なんだと
納得したら変に感動したりして。
隣で泣いてる女の子は今日の彼女。
昨日付き合ったばかりだった。





『転落事故なんです!!』





野次馬に律儀に答える彼女と。
鉄柵にぶっ刺さったまんまの俺と。
何だろうね、この修羅場。
ちっとも楽じゃない。泣き喚く彼女。
集まる群集。ざわめき。
あぁ、面倒臭い。鬱陶しい。
何でこんなに騒がれてんだか。
しかも事故だなんて。馬鹿げてる。
自分で飛び降りたんだから。
放っておいてくれよ。
5階からなら。死ねると思ったんだ。
全部差し置いて、不意に
死にたくなる事だってあるだろう?
でも鉄柵が貫通したのに、まだ生きてて
鮮明に考え事してる俺って
結構、化け物じみてるよね。






「〇〇!! 死んじゃいやだぁ!!」





『―――、』





ああ。いつだったか…やっぱり
そんな事を言われたっけ。
誰に言われたのかさえ思い出せないのに
確かに言われた事だけは覚えてる。
「死んじゃいやだ」って泣きながら、
俺にすがったんだ……。
俺、に………………?




 
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