電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□輪廻を繋ぐ者
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『誰…だっけ』





微かな違和感が思考を鈍らせる。
頭の奥底にしまってある、何か
何か……鮮烈なものを
呼び覚まそうとする。
炎と絶望、悪意と憎悪が入り乱れ
狂気に支配された記憶……
だけど、小さな、小さな





『………誰だ?』




その記憶に、目を凝らす。
触れようとすると心を焼かれて
何故だか涙が溢れ返った。
知らない世界。だけど確かに
とても、とても大事なものだった。
ただひとつ。俺を救った、小さな…





「……、ずっと一緒にいてね」





ああ、そうだ。約束したんだ。
ずっとそばにいるって。
何度でも、寄り添うって。
―――――――誰と、誰が?







『…とまあ、そーゆーシチュエーションで死ぬ訳だな、彼は。答えは見つけられずじまい』





『残酷な事で。アナタの描く世界は、いつも不毛に満ちている』



『それを、どう見ようが、君の自由なのさ。反面教師と言う言葉があるぐらいだからね。教訓とするのか、鼻で笑うのか。右から左へ流すのか…選択肢は無限だよ』



『いっそ清々しいほど、自己中心の発想でやすな』



『それが僕の世界なのさ』



『中二病って知ってやすか?』



霞む視界に聞こえた声は
どうしてか酷く懐かしく
雑音でしかなかった周囲の声を
見事に遮断した。
胸が痛いのは何故だろう。
『ああ、やっと…』
何がかは判らないけど酷く安心した。
ただ、ずっと探していたものを
見つけたような感覚に落ちて。




『素晴らしいと思わないか? この子は。新たな人生を歩むんだよ。何処か別の世界で、また別の物語の歯車になるんだ』



『…………………、』



『例えば、あの娘の番であったりと、意義は様々だが。僕は、生まれて来た具現を死なせたりしない。かりそめでもいい。意義を与え、意味を見いだす』



『傲慢かつ。自己陶酔の果てでやすね。いつか嫌われますよ』



『大丈夫。もう嫌われてる』



『失礼しました』



神との邂逅。記憶の融合。
枠を越え、情報を繋ぐもの。
ああ、やっと、やっと思い出した。
俺が探していたもの……は






『つう訳だ、〇〇。新しい人生にようこそ』





『――――、最低だな、アンタ』





魂の回路。一筋の不穏。君に逢う為に
何度となく用意された、俺の……





#000『輪廻を繋ぐ者』


 


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