電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□遠い日の記憶
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#000『火捕辺補佐が出来上がるまで』







事の成り行きは余りにも唐突で
私を差し置き、話は
どんどん進んで行った。
その後、私は駿河愁水の家で
一カ月、人間としての訓練を
受ける事となった訳だが……








―――――3日後





『いいか、有寛君。君は火捕辺有寛。24歳。A型。出身地は東京都。趣味は読書と映画鑑賞。これが、人間としての君だ。普遍的でいて無害。まずはこれを極めろ。記憶するのでは無く、完璧に把握しなさい』



『普遍的、か。だとすれば相当つまらないものだな、人間とは……大体、』



『うるさい。いいから、返事しろ。私にいちいち反抗するでない、この屁理屈男。あまり生意気言ってると豚に書き換えるよ!!』



『なんて傲慢な……』



『あと、私には敬語。年上には敬語を使いなさい。でなければ生意気と見なす!!』



『……了解した』





――――――7日後





『有寛君。私の魔術大全知らないか?』



『昨日、ご自分で書物庫にしまわれたじゃないですか』



『え、そうだっけ?』



『やだなあ。もう、ボケてきてるんですか、先生』



『………君、随分と人間らしくなってきたじゃないか』



『お陰様で』





―――――10日後





『有寛君、好きな食べ物は出来たかい?』



『そうですね…今の所、特には。でも、紅茶? あれは好きです。香りがいい』



『……そうか。それは良かった』



『ああ。あと。苦手なものがひとつ』



『何だね?』



『先生が作ったパウンドケーキ? あれは非常に不味かった』



『………有寛君。そう言うのはね、面と向かって本人に言っちゃならんよ。傷つくから』





―――――14日後





『有寛君。今日のノルマは達成したかね』



『はい。60冊程。なかなか勉強になりました』



『精進してるねぇ』



『読み出すと興味深いもので、つい。本を読むのは、非常に面白い』



『そうか。ならば、その“楽しい事”を大事にしなさい。君にとって有意義である事を。“楽しい”“嬉しい”そう思える事で、人は己の心を支えて行く生き物なのだから』




『…………、はい』







 


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