電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)
□化け物
1ページ/2ページ
#000『化け物』
無意味な殺生は嫌いだ。
時間の無い俺から見れば
老い朽ち行く命は、尊く眩い。
限られた時間の中に
重ね築かれた命こそ
愛すべきに値する真理なのだから。
『レッショー、てめぇまた人の邪魔しやがったな』
『何がでやすか?』
『モルモットの檻ぶっ壊しただろう? もぬけの殻だボケが』
『はぁ…それは災難で。逃げちまったもんは仕方ないでやすねぇ』
『てめぇいい加減にしねぇとマジで頭解体すんぞ、犬畜生が』
『まあ、檻をぶち開けたのが私めだとして、逃げたのは彼らの意志。ともなれば、私めはその意志を後押ししたと言う事で、幇助に値しやすか……。しかし全ての生き物には選択肢が用意されてやす』
『癇に障んだよ、てめぇの屁理屈はよぉ、いちいちいちいちいちいちいち、揚げ足取ってダラダラダラダラ訳わかんねえ事ほざいてんじゃねぇぞ、糞ボケ、ぶっ殺されてぇのか!?』
『突然キレるのは如何なものかと。副隊長殿はカリカリし過ぎでやすよ、そんなんじゃモテませんよ』
『烈将、てめぇ、俺を舐めてるな。小馬鹿にしてる、見下してる、完全に見くびってやがる……』
『ええ。ただの人間で、ただの異常者と認識しておりやす。私めより遥かに劣る命でやす』
『烈将!!』
桔梗と言う男は人間で
表じゃ著名な人形師だが
頭がどうかしちまってて
裏じゃ、ただの猟奇犯だ。
人間を分解したがる。
分解して、再構築して
新たな命を造ろうとしてる。
まるで人形を造るように
自分の手で人間を造ろうとしてる。
神への反逆者で命に対する冒涜者。
だから俺は、どうしても
彼が嫌いだった。
『おっと……』
『脳髄ぶちまけて一回死んどけ、糞ボケがぁあ!!!』
『痛そうだから嫌です』
俺とは違う。人間なのに。
人を愛さない彼は
人を物としてしか見ない彼は
俺よりも悲惨に見えた。
『あぁ…ムカつく…ムカつく…ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく…』
『副隊長殿、ラリッてらっしゃる?』
『てめぇの、その態度がムカつくんだよ芝祈ぃいいいいいいいいい!!!』
時間なんて無いから、俺は
万物を守る者になりたかった。
尽きる事の無い俺の時間を
全ての命に捧げようと。
だから、その為ならば……