電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□元凶
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#000『元凶』





私の一族は皆、私の前で死に絶えた。





『龍飼い…譲ノ葉の気狂いめが……、よくも……』



『「我ガ名ハ霧雨、譲ノ葉ノ血ニ潜ミ、不死ヲ食ラウ者也」』



『頭の中まで…侵蝕されおったか……哀れなものよ……譲ノ葉桐夜』



不老不死と呼ばれた一族も
天敵には適わなかった。
父と母は首を取られ
同じ年の妹は、戦火の中、崩れて来た
柱の下敷きになってそのまま
見るも無残に枯れ果てた。
私の世界は混沌と、根深き炎に包まれて。




『「荒神ハ永遠ニ我ガ手中ニ或ル。荒神ガ居ル限リ、我ガ命モ又、永遠也」』




己が血に潜む龍に喰われたその男は
気狂いと呼ばれ、彼の長刀は
容赦なく私を斬りつけた。
恐怖と絶望が視界を覆う。
理不尽な死、絶対的な痛み。
逃げる事も出来ず、ただ見開いた眼が
男を捉えて離さなかった。
目に焼き付いた立ち姿。
白と呼ばれた我々とは対象的に
赤い眼をした漆黒の男。
恐れと憎悪の象徴となって
脳裏に深く刻まれる。




『止めろ、桐夜』



『!』



二度目の太刀が振りかざされた時
私の前に立ちはだかったのは
今、私を殺そうとしている男の
実弟だった。音もなく切り裂かれ
私を庇う後ろ姿が世界の色を無くす。
信じられない光景と底無しの恐怖。
其処には理解できるものなど
何一つ存在しなかった。





『「灯夜……貴様」』



『万物は対極であり平等だ。我らが為に犠牲になるものなど、此の世には存在しない。見誤るな』



『「譲ノ葉ト荒神。我々ハ永劫、捕食者ト餌デ在リ、常ニ強者ハ神ニ等シキ。万物ノ頂点ニ君臨スルハ、我等、龍族コソノ然リ」』



『お前じゃない。俺は桐夜と話してる』



『「我ハ……桐夜ト同質ダ」』




その異常におののく事もなく
淡々と話す無機質な彼ら。
反面、一度だけ此方を振り返り
小さな声で『逃げなさい』と呟いた彼は
とても穏やかな顔をしていた。
この残酷な世界に不釣り合いな
優しい顔を。




『………っ』



泣きながら走って走って
何処までも走って
血と悲しみに明け暮れて
理由も知らずに世界を呪った。
出血多量で野垂れ死ぬ直前、私は
泣きながら、笑っていたのだ。
不死を破壊する者によって与えられた
理不尽極まりない、晴れた日の惨劇を。
呪わずして目を瞑るほど
完成された人格ではなかったから。







 
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