電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□蚊欲と魔女
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#000『蚊欲と魔女』





本能が歪んでる。良識から外れてる。
例えば異常な嫉妬心とか
独占欲の強さだとか
マトモな感情が揃わない。
俺の中にある愛情と破壊は
見事同列に並んでる。
誰よりも大切に思う人さえ
残虐な死を願う。
混ざりすぎた異質な血は
人と呼ぶには薄情で
化け物と呼ぶには薄弱で
ただただ歪み腐れてる。






『よう、半端者。お前、闇喰か?』



『…―――ガ――…アァ…』



『最近、治安が悪いから、てっきり闇の遣いが暴れ回っているのかと思いきや。随分と弱っているな。どうやら人違いのようだ。身形は奴の特徴に近いようだが、若干濃いぞ。神とも魔物とも付かぬ者よ。お前は何だ?』



『―カ…―――ワ……リ……』


『カワリ……? お前もしや、蚊欲(カワホリ)か……? 羽も爪も歪だが確かに多少面影はあるな……雑種か』



『…―…セ…―血…――マノ……、俺――――ダ』



『では異端の蚊欲よ。教えてくれ。私は愁水。駿河愁水と言う。元は人間で、今は暇を持て余した魔女だ。お前は、何者なんだ?』



『……? 名―――――エ……――俺――…リ』



『違う。お前は蚊欲だ。それは判った。私が知りたいのは、お前が“誰か”と言うことさ。名前を聞いている』



『…………名……エ――、名……キ、シ…――キ…―…ト』



『シバキ、ヤスヒト?』



『ダ―血、……―足リ…―ナ、俺…―…命――…』



『ふむ…。限界のようだな。シバキヤスヒト。そうであれば、いつぞや真木の予言で聞いた名だ。何やら必然の因果を感じるぞ』



『ガ――――足リ―――死―』



『では、ヤスヒト。名を教えてくれたお礼にお前が今一番欲するものを与えよう。私は気まぐれだが、成る可く平等に努めている。果たして、異形を流れた神の残骸に魔女の血が合うのかは謎だが』




優しい彼女と邪な俺。
俺達は対極にすら位置しなかった。
救世主。まさにそれだ。
君が目映い神に見えた瞬間
俺は歪な本能を封じ込めた。
異質な神を流れた俺は
殺戮と軽率な愛情を司る。
もしも君の側にいたいのならば
君に執着してはいけない。
俺は命を食らうもの。
決して君を想ってはいけない。




 
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