電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□蚊欲と魔女
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誰かを愛すると言う事を
禁じられた一族だ。
愛した物を壊してしまうから
生き残れずに絶滅した。
血に抗う事をしないから。
けれど唯一生かされた俺には
きっと何か意味があるのだろう。
そう思えば意義も見つかる。
君を愛せないならせめて
君が愛する“人間”を一緒に
守りたいと思ったんだ。
俺の愛情と良識の全ては
幾年生きる全てのものへ。
死にかけの化け物に己の血肉を
分け与えた魔女が恥じぬよう。
万物に平等を謳う魔女は
出来損ないの化け物にさえ
確かに優しかったのだから。





『愁水、また何を拾ってきたんですか?』



『おぉ。白羅、ただいま。えーとだな、コイツは……ヤスヒト。何か雑種のコウモリだ。耶蘇の島で拾ったんだ』



『耶蘇神島(ヤソガミ)ですか?』



『そう。暇だったもんでな。死にかけてたから保護してきた。ああ、頭はいいみたいだから、特に教育しなくて大丈夫だ。仲良くしてやってくれ』



『………仲良くったって』



『――――――』



『…化け物じゃないですか』



『………白銀――ノ……―』



『え、と。よろしく…お願いしますね。ヤスヒトさん?』



『…――、―…ク』



『つうことで。手当てしてやってくれ。ああ、イノセには見せるなよ。アイツの可愛がり方は屈折してるからな。まだ傷も癒えてないのにヤスヒトが殺されてしまう』



『了解。それで、愁水“ヤスヒトさん”を治してどうするつもりですか? 新しいペットにでも?』



『違う。そうだなぁ。新しいルームシェアと言った所か?』



『………ルームシェア?』



『家族だ。私は、彼に興味を持った。なかなか話の判る奴でな。今までに人を喰らわなかったと言う。そのせいで衰弱していた所を神狩りに遭ったそうな。世にも珍しい優しい異業種だ。何を流れて生まれたらそうなるのか、私は知りたくなったのだ』



『暇つぶしにも程がありますね。貴女は、そうやってすぐ誰にでも興味を持つ。悪い癖です』


『そうだな。しかし、家族は多い方が楽しいだろ、白羅?』



『……そう、ですかね?』



『そうだとも!』



豪快に笑う彼女とは裏腹で
俺をうざったそうに見た
幼い白羅の目は、まだ素直だった。
それは今よりずっと昔の話。
まだ何もかもが始まる前
俺が、まだ『俺』で
人知れず君を想っていた頃の話。







 


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