電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□白VS潔白
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#000『白VS潔白』





煉獄ってのは地獄よりマシなんだよ。
罪深きロクデナシ共を火炙りにしてさ
浄化してやるのがお仕事だ。
更正施設みたいなもんかな。
地獄には一ミリの救いもねぇが
ここなら、まあ、まだ希望がある。
与えられた罰に許しを乞う
機会があるだけ、
救済の余地もあるのさ。



『と。教えた筈だが。これは何のつもりかな、白羅君』



歪み腐れた偽善者も
ここまでくりゃ立派なもんだ。
ガキの頃から知ってる奴に
まさか足元掬われるなんて
俺一生の不覚に他ならない。
俺の中じゃ他人はモブだ。
全て景色と変わらない。
草も花も木も建物も
そこいらを行き交う群集も
無害極まり無い平和の境地。
煉獄を与えられた俺はそこに尽きるのみ。
モブに邪魔されていいような
薄っぺらいもんでもない。
ガキを侮って無駄にした時間を
記憶の隅から消し去りたい。




『革命ですよ、イノセント。私は、その生ぬるいシステムが大っ嫌いなんです。弱い者がいつもバカを見る。他者に害成す者は一律、同じだけの悲劇で幕を閉じるべきです。貴男や私のように、救いようの無い者が確かにいるのだから』



『勝手な事言いますねえ、君は。頭ん中が白過ぎて駄目だ。グレーゾーンってものをまるで分かってない。なーんにも分かってない。極論に走るバカの典型。ナルシズム最高潮の主観正義なんてものは極悪と同意義なんですよ、白羅君』



『いいえ。イノセント。誰一人例外なく、我々は主観で正義を語っている。そして私の正義とは間違ってると思うものを徹底して破壊することなんです』



『頑固と言うか言葉が通じないってどうなんですかねぇ。まだ若いのに勿体無い。愁水さんは教育方針を間違えたようですね。君みたいな糞野郎を造り上げてしまった。それも罪に値するが、君のルールに従うなら僕は君も彼女もぶっ殺さなきゃならないね』



『どうぞ。出来るものなら。魍魎を束ねてるだけの悪魔にどうこうできる程度のものではありませんよ。私も、あの人も』



『言うじゃねぇか、クソガキが』



『煉獄なんてね、必要ないんです。堕ちるなら、ただひたすらに。底の見え無い地獄がいいでしょう?』




最後に笑ってみせたあれの眼は
もう完全にイカレちまってて
こいつは殺すしかないなと
少しだけ哀れんだのは覚えてる。
百害の存在に成り下がったあれは
俺の中じゃもうモブですらなかった。




 


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