異邦人大系 読み切り版

□天津国津壊滅事件
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天津、諜報部。





──バタバタバタバタ、ガチャッ!!


『───せっ、先生っ…!!』


『…おっ? 優人、よく此処が分かったな』


『だ、だって。先生、部屋にいらっしゃらなかったから…!』


『あはは。優人くん、お疲れ〜☆』


『────の、の、範記さんっ……!!?』


『ははは。いやはや、優人君。よかった。呼びに行く手間が省けやした』


『…優人、すまなかったな。本当に───、』


『…??、烈将さん…、桐己さん……』



優人は一人、瞬く。





『これって…、一体、どーゆー事なんですか……??』



部屋の奥の黒峰を除き
祟場、烈将、桐己が
顔を見合わせると
苦笑混じりに
優人へと笑って見せる。





『────どうも、こうも。この有り様だよ』


『…?』



優人は首を傾ける。





『───どうやら。あの栄養剤は、病原体とは違って。他人へ伝染させればさせる程、その効能は薄れるものだったらしいんだ』


『─!、そ、それで、範記さん…。もう、平気なんですか……?』


『お陰様で〜☆ ざっと、三百人近くは噛み付いたかな? 今は、寧ろ。ストレスも発散出来て、すっきり爽快??』


『…………さ、さんびゃくっ──、』



優人は、ズルリッと
片肩を落とした……。

と、転じてハッとする。





『あっ!? そうだった! そっ、そんな事より、大変なんです…! 大上さんがっ………』


『…ふむ。よく、眠っておりやすね。静かで宜しい───、』


『え? え? そ…、そうじゃなくって……! 大上さん、急に意識、失っちゃって!』


『──安心しろ、優人。芝祈の言った通り、彼女は只、眠っているだけだ。…女史の言ったように、感染源は他人へと感染するごとに効能が薄れるものだった。察するに、彼女の感染はだいぶ後半のものだろう。直ぐに、目を覚ますさ。普段の彼女へと戻ってね───』


『本当、ですか…?』


『─ああ、』


『……………良かった──、』


『…………馬鹿…、ネコ…。お前っ……』


『…え?』



次の瞬間──。








──がばぁっ!!


『?!、…お、大上さんっ!!?』


『──馬鹿ネコ…!! お前、本っ当に馬鹿ネコだなっ! アタシなんかの心配なんてして────このっ、このこのこのっ』


──むっぎゅー!!!


『あ、えぇ…?? 大上さん、あのっ………く、苦しいですよ──!?』








────こうして…。

あわや、天津国津壊滅事件は
爆発的な感染力故に齎された拡散力にて
どうにか三日を待たずに収拾の方を
無事、遂げたのであった───…。



『我々を滅ぼすつもりか、時幻党──?!! (by 協会一同)』








時幻党と協会との確執がグンッと広がった
とある梅雨の日の事件である────…。




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