異邦人大系 第一部〜第二部
□エピソード編
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-02.ネヅミと猫-
『誰だ、てめぇ』
逆光を浴びた宍倉の髪は逆立ち、その瞳は獣そのものの様に思えた。
その殺気に僅かに後退り、答える。
「…この学校の生徒だよ」
『その学校の生徒が何で、こんな夜中にウロチョロしてんだよ?!』
(―お前がソレ言うか!? …ほんと、探偵は何でも有りなのな…)
半ば呆れながら、続ける。
「忘れ物を取りに…」
『そんなんで、納得するとでも思ってんのか、あぁ?!』
宍倉は、掴み掛かろうと足を踏み出した……そこへ。
――チリリィー…ンッ
『にゃあ〜…』
一匹の黒猫が、獣人化した宍倉の足に絡み付いた。
『ね…猫ッ!!!!』
宍倉の声が上擦った。
そのまま、跳び退いて窓辺へ勢いよく衝突した。
(…こいつ猫、駄目なのか……)
見ると獣人化も解けている。
一息ついた所にバタバタと足音が駆け付けて来た。
「ネヅ君ッ?! どうしたの急に…大丈夫??」
「誰だ、そこに居るのは!!」
ライトで不意に照らされ、顔に向けられる光を右手を掲げて遮った。
「だから、ココの生徒ですってば。…忘れ物を取りに!」
「忘れ物…?」
よく見ると、彼の手には辞書らしきものが握られていた。
「勘弁して下さいよ、探偵さん…」
「…お前は、2‐Bの鈴木か? …いや、2‐Eの佐々木だったか」
「…………2‐Aの陣内です」
「………」
「………」
「……陣内君?! …でも、どうしてこんな時間に、どうやって」
陣内は、息を吐く。
「学校の七不思議、其の四。学園の片隅の空き教室には、探偵さんが住んでいて…って、あったでしょ?」
陣内は、辞書を持った手で器用に四本指を立てた。
「あれはつまり、その教室に人を近付けない為に作られた…。そうでしょ、相条センセ?」
相条は、ポカンとしている。
それにまた、ため息を付き、草薙に向き合う。
「あそこの教室の窓の鍵、ずいぶん昔っから壊れてるって話じゃないですか。そっから入って帰ろうとしてたの。解って貰えたかな、草薙さん?」
草薙は、ただ頷いた。
「じゃ、僕はこれで。…クロ、帰るよ」
『にゃ〜』
陣内と黒猫は、暗闇の中に溶けて行った。
「あ、花さん? 葵のヤツが心配してるから、早く自分の身体に戻んなよぉー…」
暗闇に響く声。
『ヒマちゃんが…?』
「?、…お花ちゃん??」
「…クソッ、あんにゃろぅ……それにあのクソ猫めぇ〜ッ!!」