異邦人大系 第三部
□Happy halloween chaos night? (W)
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男の名前は、確か、桔梗。
鬼狩りの副隊長であり、人形師。
優人が知っているのはそのくらいだ──…。
「───さぁ、入って」
桔梗は部屋に着くなり
中へ優人を押し込めると
ドアの前へと立ち尽くした。
カチャリと内側から
鍵が掛けられる──。
「…………、あの…」
殺風景な部屋の中へと
放り込まれ、優人は
僅かに辺りを見回してから
桔梗の方を振り向いた。
「その辺、掛けて待ってて? 今、絆創膏を取って来る──」
「……………」
優人は正直、困った事になったと
部屋の片隅へ佇んだまま
思考をグルグルと巡らせた。
その視界の隅で、隣の部屋へ
入って行った桔梗が
先程の猫の入ったカゴを
乱暴にそこへ放ったのが目に付いて
優人の中の彼への不信感は
益々、強まった。
隣の部屋へ桔梗が姿を消した事に
一瞬、優人は部屋から
抜け出そうか迷うが、
ドアノブへと手を伸ばした所へ
絆創膏と消毒薬を手にした桔梗が
戻って来た気配がして優人は
ギクリと身を強ばらせた。
「──どうかした? こっち来て座りなよ」
「…あ、はい」
ギクシャクとぎこちなさそうに
優人は桔梗の指す椅子へと
歩み寄り腰掛けた。
(……手当てだけして貰ったら、お礼を言って先生の所へ戻ろう…)
何故だか分からないが
彼とは余り深く関わりたくないと
優人は思った。
そんな事を優人が
思っている事など露知らず
桔梗は優人の手当てに勤しんでいる。