異邦人大系 短編集
□おれがオンナで、相手はネコで。
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#最終話
ネコの手を取り、足早に
部屋へと戻り、鍵を掛けた。
茫然と立ち尽くすネコに笑って
一度、軽く引き寄せ上向いて
触れるだけの、そんな
温い口付けをする。
『─────来いよ、』
ボロボロな身体、真っ赤な目。
愚かだと思う反面、コイツはコイツで
コイツなりに必死だったんだろうと思うと
いじらしく健気で、愚かで……
愛おしくなってしまう。
『───待って…、イノセさ………』
ベッドに押し倒して無遠慮に口付ける。
ほどいた髪が相手の顔に掛かったりするのが
煩わしくて髪を耳に掛ける合間にも
ネコは『待ってくれ』と何度も
オレの名前を呼び掛け、もがいた───…。
『……ナニ───、』
乱れた呼吸を整えつつ、
ネコを見下げる。
何の事はない、極めて
見慣れたいつもの光景だ──。
組み敷かれては蹂躙されるのを待つ。
…ただ、今回ばかしはオレが女で
相手にそれを逆に求めている部分があって
腹立たしい事だが下腹がヒクついては
ネコのを食いたがってるのが
自分でもわかって───、
どうすんだよ、と。どうにもならない
葛藤を一人で繰り返す。性欲が収まらねぇ……。
『…駄目です、それじゃあ───』
『────あ…?』
『──駄目なんです。…俺が、俺からしないと…………だから、』
『だから、待ってください──』
……余裕も度胸も無い癖に。
そう、オレの下でほざく。
『───息、あがってんじゃねぇーよ。そんなんで、お前……』
『すみません。時間…、時間ください………』
跨がった下で、相手のそれは
僅かにだが反応してる。
──キスだぞ? たかだか。
時間も何も…。一瞬じゃねぇか、そんな。
それ以上を求めるつもりも………
いや、どうなんだかな……。
…コイツになら、なんて。
それも悪くねぇかとか
ちょっとだけ思ってんだけど、
今は、優先事項が他にある───。