異邦人大系 短編集
□過誤の鳥 〜エピソード〜
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#エピソード06 『幽霊アパート』
『────お祓い…??』
雑居ビル二階、便利屋事務所。
『…その〜、お寺さんとか本業の方に頼んだ方がよくないですか? それ───』
『……今、仏事が立て続いてて。忙しいからとかで。直ぐには無理だって言われて、断られちゃったんです…』
『うーん……』
『・・・・・・、』
『お願いしますよ…! オレ、他に行くとこないし。き、気休めでも何でも構いませんからっ──!! ここ、便利屋さんでしょ?!』
“便利屋といえど万能じゃあない……”
“断るべき仕事はちゃんと断んだよ。ウチは───”
以前、無理難題を
押し付けて来た客に対し
王取は問答無用でその相手を
叩き出し、追い返した。
“便利屋だからって、何でもかんでもすると思ったら大間違いなんだよ────”
蒼は窓辺の所長席で煙草を吹かす
王取を僅かに振り返った。
“──断れ…、”
一度、チラリと視線を合わせて
王取の様子やその態度から
蒼はそれを察したが。
しかし─、
目の前で藁にも縋るといった具合に
切羽詰まった様子にてガチガチと
震える如何にも大人しそうな
男子学生を前に、突き放す事も
何となくだが気が引けた。
『────素人の気休め程度でいいんですね? 料金はちゃんと頂きますよ。』
静まり返った事務所内に
蒼の言葉だけがポツリと響いた──。
ガタリッ、と背後から王取の
言い知れぬ殺気を感じたが
蒼はそれに気付かない振りをして
目の前の彼に言葉を続けた。
『───僕の友人に、お寺の生まれの方がいらっしゃるんです。お祓いの方法、ちゃんと訊いてきますんで。それで、一先ずは何とか。もし、駄目でしたら後々で本業の方に祓って貰ってください。…ウチでは取りあえず、飽く迄も。気休め程度に──。それでも構いませんか?』
『……は、はいっ!、…あ、ありがとうございます──!!』