電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)
□水鏡吉崎について
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#000『続・水鏡吉崎について』
『ああ、そうだ、吉崎』
『なんですか?』
『最近、アイツな。ストレス溜まってるみたいだから、気をつけなよ』
『え?』
『遊び相手の灯群がいなくて寂しいのさ』
『な………、』
『だから、全力で、ね? 応援しているよ』
『ちょ、不安になるような事、言ってかないでくださいよ!!』
蒸し暑い、満月の夜だった。
水鏡吉崎は、暗い湖のほとりで
白い女と話していた。
色素の薄い髪と、淡く光る緑色の眼。
夜の闇に一等映える、彼女は
吉崎の師の一人で。いつも満面に
笑みを浮かべては彼に
不安を残し、姿を消す。
自由と気紛れを具現化した
猫のような人だった。
吉崎は、いつも通り眉をしかめて
独り、夜に悪態吐く。
『……ったく。人の不安を煽るなら、アドバイスぐらいしてけよ、クソババア』
『人のツレに暴言吐くとは、いい度胸だなー、クソガキ☆』
『げ!!』
―――――――――ヒュッ
『ちょ、いきなり、仕掛けるなんて卑怯じゃないですか!! 瀬戸さん!?』
『んとね。桐己が言ってただろ? 今日の俺は機嫌が悪いのさ☆』
『ニコニコしながらよく言うな!!』
―――――――――バキッ!!
『いでぇっ!!』
『ゴチャゴチャうるせーガキだな。口数多い男はモテないよ☆』
『て…めっ、顔、狙いやがったな!?』
『うーん。狙ったけどさ。別に庇うような顔でもないでしょー? 大袈裟な』
『失礼すぎる!!』
『そうかなぁ。じゃあ、はい、ティッシュ。ただでさえ大した顔じゃないのに、益々、汚いから、これあげるよ。鼻血ぶーすけ君?』
『アンタ本当にむかつくな!!』
『俺、好きな子にはとっても優しくてぇ、キライな子にはとことん意地悪なの☆』
『それただの依怙贔屓じゃねぇか!!』
『そうだよ。当たり前じゃん』
『あっさりと!!』
『人間誰しもそんなもんでしょ。建て前を翳して生きてる。とりあえず、俺、お前の事、嫌いだからさ、死んでも恨むなよ? 責任は取らない☆』
『な、な、何て身勝手なぁあああ!!!』
吉崎の雄叫びは夜の静寂を打ち破り
辺りに激しくこだました。