電霊‐LOGICAL PARADOX‐ (仮)

□元凶
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#000『元凶2』





道端に落ちてたんだ。
手負いの白い子供。死ぬ一歩寸前で
もう動ける状態ではなかった。
その色合いから最初は
アルビノかと思ったが
そうではなくて不老不死を司る
荒神一族の変異種だった。
白銀の髪と金色の目。
美しい容姿とは裏腹に
血まみれで、傷だらけ。
何があったかは判らないけど
余程悲惨な目に遭ったのだろう。
泣きながら空を笑っていた。
彼を拾った時、まだほんの子供だったが
心は既に大きく歪み腐っていた。
もう手の施し用が無いぐらい
肉体以上に歪で悲しい色を湛えて。




『こんな所で子供が野垂れ死ぬのは見逃しちゃならんな』



『…………』




心を閉ざし、ただ笑顔で。
目元は涙でぐちゃぐちゃなのに
何にも言わずに笑うから
いたたまれなかったんだ。
世界はこんな子供の心まで壊して
一体どんな未来を描いたのかと。





『白羅、私の魔術大全…』



『そちらの棚に』



『ホントだ、ありがとう』



『いえ』



それでも上場に育てたつもりでいた。
時が和らげてくれる痛みも
あるだろうと思っていたから。
私が甘かったのか、彼の執念が
強過ぎたのかは判らないが
結局その心を溶かす事は出来なかった。
思えば、あの時から道端で
子供を拾う確率が高いのは
彼に対する罪悪感なのかもしれない。
最後まで救う事の出来なかった彼への。




『愁水』



『なんだ?』





いつしか私の身長を抜いて
私より何でもこなせる男になっていた。
観察力があり、よく気が利く奴で
私の事なら大抵何でも判っていた。




『私は…貴女に感謝しています。私に強さと生きる理由をくれた』



『おい、いきなりどうしたんだ、改まって』



『いつか言おうと思っていた事ですから、聞いて下さい』



『…………』



『多分、この先。如何なる未来においても、私は、貴女に感謝し貴女を愛し続けるでしょう。母親として。一人の女性として』



『…………白羅、お前』



『それと同時に、永劫、貴女を恨み続ける。壊れた私を生かし続けた貴女を』



『……………』



『忘れないで下さい、ずっと』




その夜、白羅は私の前から姿を消した。
次に再会したのは、数百年も後の事で。
八十神島と言われる異形の島で
彼は碌でなし、称して『悪意』に
成り下がっていた。




 
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