異邦人大系 読み切り版

□バレンタインとか超あれな日《読み切り版》
2ページ/4ページ









天津総滅師協会、食堂────。





『──って、事があったの! ねぇ、酷くないですかぁ!?』


『んまぁ、何だ。彼らの気持ちも判らん事もないから、俺からは何も言えんがな───』


『もう、祟場さんまで!』


『ははっ…』



鈴萌はプリプリと
この乙女心をなかなか
理解してくれない男共へ
不満を募らせていた。
それに呆れた様子で
祟場は溜め息混じりに
煙草の煙を吐き出すと
灰皿へ煙草を押し消す。
箱から新たに一本抜くと
それに鈴萌が何かへ
ふと、気が付いた───。





『あれ? それ、祟場さんの……?』


『…ああ、』



煙草へ火を付けようとしていた
祟場がその手を止める。
鈴萌は“それ”を
手に取り暫し眺めた。
パンダのキャラクターの
真新しい小さな吸い殻入れ。








『……昨日、優人から貰ったんだ』


『陣内君から?』





((───先生、コレ。今日、買い物帰りに見つけたんです。貰って下さい))


((何だ?))


──カサッ


((携帯の吸い殻入れ。えへへ。何かそれ、プンスカに似てるでしょ。つい買っちゃったんですけど、俺じゃ使い道ないから先生に上げます))


((全く。お前なぁ…、無駄遣いするんじゃないよ──…))


((先生が使ってくれさえすれば、無駄じゃなくなるでしょう? それに、大人の煙草のポイ捨ては格好悪いですよ。使って下さいね))


((……………))








『…………断れんかった──。(汗)』


『やだぁー。何それ〜。───陣内君から、祟場さんへの“愛の告白”…??』



祟場をからかい大笑いする鈴萌に
祟場の頬へ恥ずかしさからか
微かに赤みが差す。





『あいつ、天然な所あるから。多分、深い意味は無いと思うよ』


『へぇ〜?、ふぅ〜ん??』


『何だ、その目は……。』


『祟場さん。まだ、一回も使ってないじゃん。───どーして?』


『・・・当たり前だ。恥ずかしくて、人前で使えるか。こんな物────、』


『…でも、こうして人前に出してるじゃん?』


『それは…。ついだ、つい───、』


『ふーん?』


『……………、』


『(ニヨニヨ)』


『…………それに──、』


『それに?』


『勿体ないだろ─────』




 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ