異邦人大系 読み切り版

□バレンタインとか超あれな日《読み切り版》
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出張から帰って来た祟場さんは
あの頃よりすっかり老けていて
たった三年の不在で、人は随分
変わるものだな、と思った。
八十神の事件より一年前、
急に出張だって姿を消したこの人は
うちの兄貴に全部転嫁して
あらゆる肩書きを捨てて旅立ったんだ。
だから正直、戻って来るとは
思わなかったし、今更戻って来ても
もはや何の権力も持たない訳で。





『うーん……』


『ん? どうした、鈴萌』


『祟場さんさあ、何か憑いてる?』


『え?』


『女の子が見える』


『……………………』


『何かねー。ふわっとしてて、ちょっとアホっぽい可愛い娘───、』


『アホっぽい…』


『心当たりある?』



気安く話し掛けられるようになった。
食堂で雑談なんて
考えられる人じゃなかったから。
前はもっとギスギス尖ってて
何だかワーカーホリック入ってたし。
眼の下にクマ作っていつも
沢山の資料を抱えて歩いてた。
だから、空気が丸くなったと言うのか
出張先で何があったのか判らないけど
あの、何処か人を突き放すような
威圧的で冷たい感じはしなくなった。
想ちゃんや霧島君は、まだ
この人と接点なんて無いけど
今のこの人なら、きっと直ぐに
仲良くなれそうだな、なんて。
昔のこの人は嫌いだったけど
今は何となく好き────。





『心当たりか……あるな。出張先で取り憑かれてたよ。丁度、アホっぽい女子高生に』


『女子高生って…。なんで? 何があったらそうなるの?』


『───まあ、色々あったんだよ。彼女は生霊だったが。長い事、一緒に居たし。多分、俺に彼女の残像が残ってるんだろう』


『・・・・もしかしてさ……、』


『ん?』


『祟場さん、ロリコ『違う。』


『…即答したね』


『お前が、聞き捨てならない事を言うからだ。俺にそんな趣味はないよ』


『いてっ──、』



額を小突かれて、何となく笑った。
何だか、先生みたいだと思って。
久し振りに会った祟場さんは
暖かくて、まるで別人だったけど
出張先で、きっと何か大切なものを
見つけたんだなぁ〜とか勝手に
自己完結したら、少し和んだ。





『──祟場さん、』


『何だ?』


『白衣、似合ってる────』


『……………、』



僕が。そう言うと祟場さんは
何も言わずに頷いて
にっこりと笑顔を浮かべた。







 
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