異邦人大系 読み切り版
□ホワイトデーとか超あれな日《読み切り版》
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『何よ、アイツら・・・あそこまで言う事ないじゃない・・・そりゃ、確かに私も悪ふざけが過ぎたかもしれないけど。そこまで酷い代物じゃないのに・・・手間暇掛けて作ったのにさ・・・』
『・・・あれ。黒峰君の弟』
『鈴萌ちゃんだー』
『へ?』
『何してるの? こんな所で』
『あ! あぁー! 苧原さんと、冴島さん!』
『黒峰君に何か用事?』
『何かあったの?? 事件??』
『あ、いや、ちょっとお兄ちゃんに愚痴を聞いて貰おうかなあと・・・』
『なんだー、ストレスはっさんか〜』
『ぽんすか!』
『・・・弟の愚痴聞きに規定違反の仕事量。あの人も大変だな。あ、そー言えば、さっき。食堂付近で君の事探してる人が居たよ』
『え? 珍しい。誰ですか?』
『何だっけ。祟場さんのとこの人。何か中性的で、お人好しっぽくて・・・、ひょろひょろした・・・あ、内藤君?』
『苧原、陣内くんだよ』
『ああ、そう。その人。うろうろしてたよ。昼食にカレー食べてたら、急に話し掛けられて。いつもこの辺にいる小柄でポニーテールの女の子知らないかって言われたから、女の子は知らないって言ったら項垂れてたけど』
『女の子じゃなくても、ぼくは知ってるよー。鈴萌ちゃんしか居ないもんね!』
『ぽんすか!』
『えー。優人くん、どうしたんだろう? わざわざ探しに来るなんて。余程の事なのかな? 取り敢えず、食堂に行ってみます!』
『うんうん、そうしたらいいよ。結構探し回ってたみたいだから早く行ってあげたらいいよ、びゅーんって!』
『ぽんすか!』
『はい、ありがとうございます!』
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食堂にて──。
『お。居た居た! 優人くん、発見!』
『あ、鈴萌さん。やっぱり来ましたね』
『ん? やっぱり?』
『鈴萌さんに渡したいものがあって。ずっと探してたんです。一通り回ってみたけどなかなか見つからないから先生に聞いてみたら、鈴萌さん大抵、食堂で大盛り牛丼か大盛り天丼食べてるからそこで待ってれば必ず来る筈だって言われて』
『・・・大盛り、って要らない情報だよね』
『確かに此処の天丼、美味しいですね。でも、大盛りメニューって凄いボリュームで吃驚しました。俺には並盛りが限界かなあ・・・鈴萌さん凄いですね!』
『・・・・・・つまり・・・大食い・・・だと?』
『鈴萌さん?』
『・・・・で。用事って何?』
『ああ、すみません。これです──』
『?』
『ホワイトデー。バレンタインのお返しです。頂いたチョコレート、友達と一緒に食べたから全部は食べられなかったんだけど、凄く美味しかったから。流石に俺のは市販だけど。鈴萌さんって何が好きか判らなかったから、一応色々入ってるのにしました。クッキーとチョコレートとマシュマロの詰め合わせ』
『・・・』
『手作りって、美味しいですよね。何か暖かい感じがして好きです』
『・・・優人くん、』
『はい?』
『うわあああああああんっ! うわあああああああんっ! ありがとおおおっ! ありがとおおおっ! 大好きいいいいいいいいっ!』
『へ?!』
『──ぐすっ…、来年も、来年もあげるからねっ! 来年は、優人くんにだけあげるもん、うわあああああああんっ!』
『ちょ、鈴萌さ・・・・・そんなに・・・俺、・・・嬉し・・・・け、ど・・・・・ぐ、ぐるじい・・・い、息が・・・息ができ・・・なっ・・・(ガクリッ)』
『───優人くんっ…?!』
────捨てる神あれば、拾う神あり。
斯くして、鈴萌のホワイトデーは幕を閉じた。
しかし、その後。優人が医務室に
緊急搬送されたのは言うまでもない……。