琉千彩

□第十六話
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――― 2×××年

    東京 ―――


―― 満月

父親との話も一通り終えて、純也はベランダの柵にもたれて、夜風にあたっていた。

恨めしそうに見上げて、煙を大きく吐き出した。

どうせ、うまくはぐらかされるだろうと思っていた。

しかし、予想外に親父は真相を語った。

母親の出生を。


『純也の言う通り、お母さんは未来から来たんだ。』

若かりし頃の父親と母親。

父親は必死で未来へと帰る手伝いをしたという。

『だけど・・・どうしても帰したくなくなった。お母さんも、お父さんと一緒になると言ってくれてね。結婚した。それから純也が出来て、その後は、純也の知っている通りだよ』


母親は、元々身体が弱かった。

だけど、小娘を産んで、それでもしばらくは何ともなかった。

二千翔を産んで、しばらく出かけると言って、姿を消した。

生まれながらに身体が弱い二千翔を、赤ん坊を残してどこの母親が家を留守にすると言う?

俺は子どもながらに不思議だった。

何事も無かったように帰って来た母さんは・・・

その頃から具合が悪くなったんだ。

「そう言えば・・・母さんが帰って来た途端、二千翔が元気になったよな。」

純也はひとり呟いて、再び肺に煙を吸い込んだ。

二千翔は心臓が悪かった。

それが検査をしても全くもって正常。

今の医学では考えられないほどの奇跡だ。

「考えるまでもなく。母さんが未来に行って何らかの対処法をもって帰って来たということか。」


そして。

何度目かも分からない時間旅行の末、身体が維持しきれなかった。

「母さんのしそうな事だよな。」

苦笑した。

ジジっと小さく音を立てて、タバコの灰が落ちていく。




『なぁ。純也。お父さんは母さんを未来から奪ったんだ。』


『可愛い娘を、今度は過去に奪われるのだろうか』


親父は、気が付いていた・・・?

確信がなくとも、察していたのだろうか。


『母さんは、知っていたのかもしれない。』


そう言って親父が持ってきた物をみて、俺は言葉を失った。


俺は確信した。


親父は気づいちゃいない。

小娘が二人存在することに。


過去の小娘

そして現在の小娘


未来は小娘を手放そうとはしない。

新しい小娘を作り出す。


・・・過去は?

過去は、小娘をどう扱おうとするのだろうか。


「・・・俺しか知らない。」


だったら、やることは一つだ。

小娘が一人でも二人でも。

三人でも。

すべて俺の妹なのだから。


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