琉千彩
□第十六話
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――― 18××年・幕末
【長州藩・桂小五郎】
「小五郎!京都へ戻るぞ!」
晋作が、突然そんなことを言い出した。
「何を言っているんだい。やっと着いたばかりじゃないか。」
そう、私たちは、奇兵隊の半分余りを連れ、萩へと到着したばかり。
これから、長州征伐に備え高杉と桂は、長府藩藩士の三吉慎蔵等と共に会議を開こうとしていた。
三吉慎蔵とは、坂本達とも面識のある、信頼のおける存在だ。
私達の到着を待ち、既に会合の席は整えられている。
息を突く間もなく、対応策を練らなければならない。
そんな大事な話し合いを前に、またしても晋作が、突拍子もないことを言い出した。
「京の藩邸へ戻るぞ!用意しろ!」
「おいおい。どういうことだ。説明してくれないか。」
すると、ぺこりと頭を下げて、中岡君が顔をだした。
手には一通の書状。
促されるままに、書状に目をおとす。
「大久保さんからッス。姉さんがいなくなりました」
どういうことだ。
書状には、確かに薩摩藩の大久保利通と書かれている。
内容は小娘さんがいなくなったこと。総出で探しているが見つからない。
そして、幕府軍により、京の街が焼かれるといった内容だ。
「何故だ。何故、京の街を焼き払う必要がある!」
「そんなもんは知らん!あいつらも、必死なんだろうよ。」
京の街は間違いなく、混乱を来すだろう。
・・・それが、狙いか?
混乱の最中に何かを仕掛けるつもりか・・・
「西郷さん率いる軍は、大久保さんが何とか食い止めてくれるらしいッス。御所の周りがきな臭いって噂もあるッス。・・・とにかく情報が足りないんスよ。」
中岡君が、口を挟んだ。
「だが・・・」
私は躊躇っていた。
このまま故郷を見捨てても良いものか・・・。
「おい!石頭は割れたんじゃないのかっ!」
ゴチン!!と大きな音がするほどの晋作の頭突きをくらい、目を瞬かせた。
「いっいてえ!!」
「な、何をするんだ!痛いに決まってるだろう?!」
「馬鹿かお前は。信じろよ。大久保の事も。三吉の事も。あいつらに任せておけば問題ないだろう!それに奇兵隊のやつらだっている。」
「晋作・・・」
「俺は行くぞ。どんな狙いかは知らねえが、それでも俺は自分の嫁を守る!」
にやりと挑発的な笑みを向けられた。
「小五郎、お前はどうする?」
安い挑発に乗る気はない。
だが・・・
「私も一緒に戻るよ。」
→つづき