過去 拍手SS

□願い星
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【願い星・呼ぶ心】




「ええと・・・気ぃを悪くさせたんなら謝るき、やき機嫌をなおしてくれんか・・・っと、これで大丈夫じゃろうか。」

たった今、書き上げた文章を見直して、何度目かのため息をついた。



・・・そもそも、あの娘が何に対して怒っちゅうのかわからん。



ぼりぼりと頭をかきむしって、龍馬は先日、舞い降りた手紙に目を落とした。





『龍馬さんの馬鹿!!』




短く一行、それしか書いてなかった。



「何故じゃ。今までは、ごじゃんと書いてくれちょったが・・・何故今回はこれだけ・・・」



今までの手紙には、学校での出来事から出かけ先での話など、日常の出来事がびっちりと書かれていた。


部活にまた行き始めたとか・・・。

この前はカナと一緒に買い物に行ったとか・・・。


そんな些細な話を聞けることが嬉しかった。

彼女が幸せでいると確信できるから。


そして必ずその先の文面は『龍馬さんは元気で過ごしていますか?慎ちゃんは・・・以蔵は・・・』と続く。



無理をするな。とか

あまり危険な場所へ行くな。とか

栄養のあるものを食べろ。とか・・・



最後には

『龍馬さんに・・・皆に逢いたいです』

・・・と綴られていた。

それは毎度変わらない。

舞い降りる手紙は、必ずそう締めくくられる。


しかし今回は違う。

何度覗き込んでも封筒には『龍馬さんの馬鹿!!』と書かれた便箋が一枚しか入っていない。

ひっくり返しても、塵一つ落ちてこない。



「なぜじゃ・・・なぜじゃぁああああっ!!!」


思い余って叫んだ。



「龍馬!!何を叫んでいる!!」

「煩い!!以蔵は黙っらってええてらりゃらええrp!!」

「言えてないぞ。どうしたんだあいつ・・・」

手紙を握りしめて、畳に突っ伏して泣く龍馬。

襖を開けて怒鳴り込んでみたものの、以蔵は怯んだ。

「しーっ!!姉さんにふられたらしいっスよ。」

そこに慌てて駆け付ける慎太郎。

「・・・今度は何して怒らしたんだ?」

「それがぁ、本人全く気付いてないんですけど・・・。」

慎太郎は以蔵にゴゾゴゾと耳打ちした。

話の内容に以蔵が目を白黒させる。


「ふん、どうせあの心配性の小娘の地雷を踏んだのであろう?」

「おや?大久保さんいらしてたんですか?」

突然現れた大久保。それに続く武市。

「ここは相変わらず出迎えもないのか。」

「すんません!一大事でして・・・」

「おい!!そろそろあいつが来る頃だろう?!祝言の準備をしなくちゃな!!」

続々と増える志士達。

「やぁ。勝手に上がらせてもらったよ。」

高杉と桂の長州組も現れた。



そう。今年も訪れる。

年に一度のあの日が・・・・



「それが・・・今年は来てくれるか分からないんス。はは・・・はははは」

龍馬を横目でみて、慎太郎が苦笑した。

桂は龍馬の部屋を覗き込む。

状況を確認するように部屋を見渡して、文机の上を見て・・・そして龍馬に視線を戻した。

「ふむ。・・・我らが織姫は、ご機嫌斜めかな?」

「まぁ、そんなところっス。」


呆れたように言う慎太郎。対して高杉がニカっと笑った。



「じゃあ、アレしかないな!」



高杉のセリフに、その場にいる全員の体が揺れた。無論、龍馬も例外では無い。


大久保の眉が吊り上る。

「・・・またアレをするのか。」

一人、乗り気な高杉だけが率先して指揮を取る。

「そうだ!直ぐに用意しろ!」

言われて慎太郎は渋々その場を後にする。

「・・・俺もやるのか?」

以蔵の顔がひくひくと引きつる。

「あたりえだ!!全員参加に意味がある!!」

言いながら高杉は、気配を消して逃げる武市の襟元を捕えた。



「「「龍馬・・・この貸しはでかいからな。」」」





――― そして。


儀式の準備は整えられた。



捧げ物に『特別』な衣装と祭具。

そして羞恥に顔を赤らめる彼らの中心に龍馬。



跪き夜空を仰いだ。



そして、頭を地に付け平身低頭―――。



「くっ・・・自尊心はないのか。」

「静かにっ!!今大事な所なんですからっ!!」



降るほどの星々。

一斉に瞬いて、いくつかが流れた。




――― もう。 仕方ないなぁ。

今回だけですよ。




空から聞こえた声に、龍馬は顔を上げた。


きらきらとした雫が、降りかかる様に舞い降りる。

泣きそうな顔で笑った。


「・・・あぁ。もうおんしの嫌がる様なことはせん。」


差し出した掌に乗せられる白くて細い指。

龍馬の手を借りて、今年も舞い降りた姫。

その場にいる全ての者から安堵の息が漏れた。



「もう。そもそも私が何に怒ってるのか、分かってます?」

ぷくりと膨らむ愛らしい頬に、龍馬はでれりと目尻を下げた。

「すまんのぉ。わしは頭が悪いき。じゃからゆっくり教えてくれんか。」



――― 満天の星。


それにも勝る笑顔。



彼等の織姫様は

未来から来た天女様でした。


〜おしまい〜



**********

トムがプレイしているオンラインゲームで七夕イベントが始まりました。

そのイベントがあまりにもラブラブだったので(笑)幕恋verにアレンジしてみました。

今回は龍馬さんがメイン。

彼等の平身低頭の儀(笑)

どんな衣装と祭具だったんでしょうねぇ。

そもそも彼らが嫌がる儀式って・・・どんな儀式だったんだ?

龍馬さんが小娘ちゃんを怒らせた理由も含めて、今回は全て皆様のご想像にお任せいたします^−^



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