過去 拍手SS

□雪ノ降ル日
1ページ/1ページ



先刻から降り始めた雪は、あっという間に降り積もり、辺りを雪景色へと変えた。

・・・止みそうにないね。

徐々に大粒になる雪に一つ息を漏らし、私は帰路を急いだ。


「桂さんっ!」


ふいに横から声を掛けられて、振り返るとそこには彼女の姿。

「どうして・・・」

満面の笑みで傘を差し出す彼女。

「桂さん、傘持ってなかったから。迎えに来ちゃいました。」

泥だらけの足元に、濡れた着物。

慣れない雪に、足を滑らせたのだろうか。

「・・・転んだの?」

私の問いに、恥ずかしそうに頬を赤らめて、はにかむ彼女。

差し出す傘に手を添えると、彼女の手は氷の様に冷たかった。

必死に私を探す彼女の姿を想像し、ぐっとこみ上げるモノを感じる。

「・・・か、桂さん?///」

思わず彼女を抱きしめる。

「こんなに身体を冷やして、いけない子。」


少し身を離して、顔を覗きこむと、頬を真っ赤に染め上げて、見上げる可愛らしい瞳。


「ふふ。帰ろうか。帰ったら、ゆっくりあたためてあげるよ。」


可愛らしい彼女の顔をそっと隠すように羽織に包んで、私は帰路を急いだ。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ